2015-05-11から1日間の記事一覧

「漫画を描いている時が一番楽しかったよ」

ストーリーが浮かぶまで,ずいぶん時間がかかり,生みの苦しみを味わっていました. ですが主人にとっては,物語を紡ぐために必要なその生みの苦しみこそ,漫画の楽しみ,人生の楽しみだったんです 昨年12月,主人が亡くなる直前のこと. 主人はソファにぼーっとした…

団地の四畳半で生まれた『はだしのゲン』

その頃,私たち夫婦は,結婚1年後に授かった娘と,江東区東砂[ひがしすな]の公営団地に住んでいました.『はだしのゲン』はその団地の四畳半の部屋で生まれました 主人が苦労していたのはストーリーです. ストーリーの面白さを追求するのにものすごい時間をかけ…

『はだしのゲン』の原型---『おれは見た』

『おれは見た』を描いた時,主人は初めて自分の被爆体験を私に話してくれました. その時までいっさい触れることのなかった話をです. 私も聞こうとは思っていませんでした. それを聞くことで主人が病気のことを考えたりしたら辛いじゃないですか. だからなるべ…

原爆への怒りを作品にする

結婚半年後,主人のお母さんが亡くなったんです. 葬儀を終え,広島からの帰りの電車の中,主人はずっと黙っていました. お弁当を食べる時も無言で,思い詰めたような顔をして,本当に一言もしゃべることなく… そして東京に戻って1年経ってから独立したのです 「独…

ふたりで東京中の映画館を訪ねた

その頃の私は漫画のことをいっさい知らないし,漫画家がどんな生活をしているかも全然知りませんでした. 生活が不安定かもしれないといった不安も特に感じていなくて. 私はのんきな性質なので,お互いの気が合えば生きていけるんじゃないかな,なんとかなるでし…

出会いは広島のビアガーデン

主人と出会ったのは1965年の夏,広島のビアガーデンででした 「うちの会社のお客さんが東京から遊びに来ているんだけど,明日東京に帰るそうなので,せっかくだから一緒に飲まない?」 そう友人から誘われたのです. 最初は全然知らない人と飲むのは気がひけまし…

作家・中沢啓治の素顔【前編】

追悼特別企画/中沢みさよさんインタビュー夫人が語る作家・中沢啓治の素顔【前編】 2012年12月19日. 惜しまれつつもこの世を去った漫画家・中沢啓治. 1千万部を超える名作『はだしのゲン』の著者が家族に見せた知られざる一面とは? 取材・文/鍋田吉郎 写真提…