団地の四畳半で生まれた『はだしのゲン』


その頃,私たち夫婦は,結婚1年後に授かった娘と,江東区東砂[ひがしすな]の公営団地に住んでいました.『はだしのゲン』はその団地の四畳半の部屋で生まれました


主人が苦労していたのはストーリーです. ストーリーの面白さを追求するのにものすごい時間をかけていました


主人は,原爆シーンを出来るだけセーブしていたのですが,どうしても描かなければいけない場面がありました. 原爆と戦争の違いなど,ここで描かなければ作品の意味がないというところです. 半面,子供達が原爆シーンが続くのを読んでくれるのかどうかを,とても心配していました. ですから,ストーリーで面白く読ませるしかないと常々言っていましたね


はだしのゲン』のコマが小さいのも,ストーリーを重視した結果です. 大きいコマは取りたくても取れませんでした. 毎回,30頁分くらいの内容を20頁に凝縮して,次から次に読みたくなるように描いていたので,大きなコマを使うと話がおさまらなくなるのだそうです. 主人は毎週毎週


「頁が足りない…」


と悩み


「ここ割るのもったいないなあ. もうちょっと頁があったらいいのに」


「やっと全部入った!」


と一喜一憂していました