1946-11-01から1ヶ月間の記事一覧

くにのあゆみ誤植訂正

史観は必要…強制は避けよ

吉田 皇紀をやめて西暦を採用した理由は 家永 第一に皇紀では古い時代が間違っているため支那,朝鮮との関係を正しく示すことが出来ないことと第二にメートル法の採用と同じ趣旨で世界共通のものに従つた方が学問的に便宜が多いためである. その他の政治的理…

明治維新と羽仁氏の研究

山形 羽仁五郎氏の明治維新の研究をどう考へるか 家永 羽仁氏の研究は概して一つのイデオロギーが表面に出すぎてどうかとおもふ. 一般の参考書として尾佐竹猛[おさたけたけき]氏の『明治維新上巻』は専門的すぎる嫌ひはあるがよいしまた『日本財政史■■』は非…

鎖国は大なる損失

磐田 海外貿易に関して何か適当な参考書は 家永 これも岩波講座『日本歴史6』中の岩生[いわお]成一「近世初期の海外関係」が一番参考にならう 吉田 鎖国についても色々に解釈されるが幕府自衛の策といつた風に考へてよいか 家永 ともかく鎖国といふものが日…

武士と庶民生活

家永 鎌倉の武家政治では武士が中央の勢力に対して農民の間から始めて庶民を代表して勢力を形成して起つたこと,そして始めて大地と結びついていた武士階級が中央に出るにつれて次第に遊民と化して行くのが近世以降の大勢であることを強調している,これは政治…

南朝正統異論なし

家永 室町,安土,桃山時代ではいはゆる南北朝の問題が重要である,南朝を正統にすることにおいては今日殆ど異論がないが,北朝についても明治天皇の陵墓令によつて諡号は従来通り天皇と申上げることに決定している. ただここで問題となるのは皇位のしるしの説明…

摂関政治は歴史の必然と理解させよ

吉田 いはゆる摂関政治について児童にどう教へたらよいか 家永 これは天皇制全般に関する問題になるけれども元来わが国体は天皇が自ら政治全体にかかはるといふよりもむしろ国民の精神的中心となつていたことに存するのであり,摂政関白政治が国体の存在を続…

上代人の夢・神話 津田氏の画期的三著

並木 所謂神話,伝説について児童たちにどう説明すべきか 家永 一度白紙の状態にかへつて出直した方がよいとおもふ. 神話はそのまま本当にあつたのではない. それは昔の人が書いた夢であり,理念であり,■■であつたしかも神話,傳説が出て来るのは余り古い時代で…

編纂の主眼…史実に重点 価値判断は児童に

山形 先ず新しい歴史編纂の主眼点について 家永 特に編纂するに当つて留意したことは第一に飽くまで教育と学問とを一致させ学問的知識に教育の基礎を求めた. 従つて史実の検討,年代研究等には細心の注意を払い従来国史の主要部を占めていた神話,伝説のごとき…

出席者

家永三郎. 東高師教授 国民学校教員 6名 山形 本紙編輯主任

『日本読書新聞』No.369(1946/11/13 2面)

去月中旬各方面の絶大な関心と期待の注視の中に新生日本の基調ともいふべき新歴史教科書が「くにのあゆみ」として誕生したが,この「くにのあゆみ」はこれを以て満足すべきものではなく,なほ修正改良すべき幾多の問題を残していることは勿論であり,特に歴史そ…

正木ひろし「不敬罪の本質」出典

初出:『人民新聞』1946/11/10 『正木ひろし著作集IV 社会・法律時評』三省堂,1983/04/01 p.102-p.104

温存される不敬罪

不敬罪が名誉毀損罪等と同じものなら,特に不敬罪を保存する必要はない. 彼等がこれを保存することに狂奔している由縁のものは,名誉毀損罪などとは根本的に異なるところがあるからだ. すなわち,名誉毀損罪等は個人が個人を訴えることによって,はじめて裁判問…

打ち消された迷信

この声明は,天皇制利用の非民主主義主義者にとっては,正に致命的であった. 天皇と一般国民とが平等の位置に立ってしまっては,彼等の利用すべき階級的の落差の余地がなくなってしまう. 既に最高司令部の数次にわたる司令によって国家神道の宣伝が禁止された結…

人間はすべて平等だ

民主国の人々は,万人が平等であり,上下の別はないが,在来の日本では,人は生まれながらにして君臣の別がありとされ,天皇は最上で,一般国民は最下であり,最上と最下の間には無数の段階が設けられていた. 命令は上からは出るが下からは出せない. 国民は政府のこ…

『人民新聞』1946/11/10 『正木ひろし著作集 第4巻 社会・法律時評』三省堂,1983/04/01 p.102-p.104

不敬罪の本質 正木ひろし 川の水には上流下流の区別があるが,海の水には上流も下流もない. これが在来の日本と民主主義国との根本的の相違であると共に不敬罪発生の原理なのである