1946-01-01から1年間の記事一覧

【1】

新しい時代は新しい歴史と,従つて新しい歴史教育をもたなければならないが,今度文部省でつくられた「くにのあゆみ」は果たして日本民族が当面している新しい時代にふさはしいものであらうか 敗戦までの歴史教育のどこがいけなかつたかは,今更言ふまでもない…

民主主義科学者協会『歴史評論』No.2(1946/12)別冊特輯⇒歴史科学協議会『歴史科学大系31 歴史教育論』校倉書房,1994/08/15 p.69-p.80

「くにのあゆみ」批判 林基・石母田正

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id:dempax:19461021 家永三郎「新歴史教科書の特色」朝日新聞,1946/10/21 id:dempax:19470423 家永三郎「くにのあゆみ : 編纂者の立場から」日本読書新聞,1947/04/23 及び「「くにのあゆみ」批判活発/民主的扮装を指摘 急進史家の追及急」『日本読書新聞』No.387…

林基・石母田正「くにのあゆみ」批判(2)

武士のおこりはかなりよく書かれているが,他方朝廷や貴族の頽廃は少しも書かれていないので(腐敗したのは,地方官だけのことにされ,中央の貴族や宮廷についてはただ「華やかなくらし」としかない),これでは政権の武士への移行の必然性が理解され得ない. だか…

くにのあゆみ誤植訂正

史観は必要…強制は避けよ

吉田 皇紀をやめて西暦を採用した理由は 家永 第一に皇紀では古い時代が間違っているため支那,朝鮮との関係を正しく示すことが出来ないことと第二にメートル法の採用と同じ趣旨で世界共通のものに従つた方が学問的に便宜が多いためである. その他の政治的理…

明治維新と羽仁氏の研究

山形 羽仁五郎氏の明治維新の研究をどう考へるか 家永 羽仁氏の研究は概して一つのイデオロギーが表面に出すぎてどうかとおもふ. 一般の参考書として尾佐竹猛[おさたけたけき]氏の『明治維新上巻』は専門的すぎる嫌ひはあるがよいしまた『日本財政史■■』は非…

鎖国は大なる損失

磐田 海外貿易に関して何か適当な参考書は 家永 これも岩波講座『日本歴史6』中の岩生[いわお]成一「近世初期の海外関係」が一番参考にならう 吉田 鎖国についても色々に解釈されるが幕府自衛の策といつた風に考へてよいか 家永 ともかく鎖国といふものが日…

武士と庶民生活

家永 鎌倉の武家政治では武士が中央の勢力に対して農民の間から始めて庶民を代表して勢力を形成して起つたこと,そして始めて大地と結びついていた武士階級が中央に出るにつれて次第に遊民と化して行くのが近世以降の大勢であることを強調している,これは政治…

南朝正統異論なし

家永 室町,安土,桃山時代ではいはゆる南北朝の問題が重要である,南朝を正統にすることにおいては今日殆ど異論がないが,北朝についても明治天皇の陵墓令によつて諡号は従来通り天皇と申上げることに決定している. ただここで問題となるのは皇位のしるしの説明…

摂関政治は歴史の必然と理解させよ

吉田 いはゆる摂関政治について児童にどう教へたらよいか 家永 これは天皇制全般に関する問題になるけれども元来わが国体は天皇が自ら政治全体にかかはるといふよりもむしろ国民の精神的中心となつていたことに存するのであり,摂政関白政治が国体の存在を続…

上代人の夢・神話 津田氏の画期的三著

並木 所謂神話,伝説について児童たちにどう説明すべきか 家永 一度白紙の状態にかへつて出直した方がよいとおもふ. 神話はそのまま本当にあつたのではない. それは昔の人が書いた夢であり,理念であり,■■であつたしかも神話,傳説が出て来るのは余り古い時代で…

編纂の主眼…史実に重点 価値判断は児童に

山形 先ず新しい歴史編纂の主眼点について 家永 特に編纂するに当つて留意したことは第一に飽くまで教育と学問とを一致させ学問的知識に教育の基礎を求めた. 従つて史実の検討,年代研究等には細心の注意を払い従来国史の主要部を占めていた神話,伝説のごとき…

出席者

家永三郎. 東高師教授 国民学校教員 6名 山形 本紙編輯主任

『日本読書新聞』No.369(1946/11/13 2面)

去月中旬各方面の絶大な関心と期待の注視の中に新生日本の基調ともいふべき新歴史教科書が「くにのあゆみ」として誕生したが,この「くにのあゆみ」はこれを以て満足すべきものではなく,なほ修正改良すべき幾多の問題を残していることは勿論であり,特に歴史そ…

正木ひろし「不敬罪の本質」出典

初出:『人民新聞』1946/11/10 『正木ひろし著作集IV 社会・法律時評』三省堂,1983/04/01 p.102-p.104

温存される不敬罪

不敬罪が名誉毀損罪等と同じものなら,特に不敬罪を保存する必要はない. 彼等がこれを保存することに狂奔している由縁のものは,名誉毀損罪などとは根本的に異なるところがあるからだ. すなわち,名誉毀損罪等は個人が個人を訴えることによって,はじめて裁判問…

打ち消された迷信

この声明は,天皇制利用の非民主主義主義者にとっては,正に致命的であった. 天皇と一般国民とが平等の位置に立ってしまっては,彼等の利用すべき階級的の落差の余地がなくなってしまう. 既に最高司令部の数次にわたる司令によって国家神道の宣伝が禁止された結…

人間はすべて平等だ

民主国の人々は,万人が平等であり,上下の別はないが,在来の日本では,人は生まれながらにして君臣の別がありとされ,天皇は最上で,一般国民は最下であり,最上と最下の間には無数の段階が設けられていた. 命令は上からは出るが下からは出せない. 国民は政府のこ…

『人民新聞』1946/11/10 『正木ひろし著作集 第4巻 社会・法律時評』三省堂,1983/04/01 p.102-p.104

不敬罪の本質 正木ひろし 川の水には上流下流の区別があるが,海の水には上流も下流もない. これが在来の日本と民主主義国との根本的の相違であると共に不敬罪発生の原理なのである

『宮本百合子全集 16巻 文化・社会評論 1945-1951』新日本出版社,1980/06/20[古い全集] p.96-p.98 初出:『婦人民主新聞』1946/10/31

『くにのあゆみ』について 宮本百合子 去年の8月からきょうまで,14カ月ほどの間,日本じゅう幾百万の国民学校の上級児童は,日本の歴史教科書というものを失っていた 小学校令が行われ,国定教科書で教えるという方法がきまったのは明治何年であったか知らない.…

陛下・けふ御巡業/愛知,岐阜両縣下へ

天皇陛下はけふ21日午前7時30分東京駅発の特別列車で6日間にわたる愛知,岐阜両縣下の民情御視察行脚の旅におのぼりになるが,今回の地方民情御視察は7回目で,去る6月静岡縣下へ御視察以来は議会開會のため延びていたもので4ヶ月ぶりである

書誌情報

『家永三郎集14評論3[歴史教育・教科書裁判]』岩波書店,1998/08/06 (p.5-p.7) 新歴史教科書の特色 この記事の右下に次のような記事があるのは,皇室と重臣が国体護持を至上使命としていた,この時期の情勢を特徴付けている[*1] *1:『服部之総著作集7 大日本帝…

『朝日新聞』1946/10/21 2面

新歴史教科書の特色 家永三郎 日本歴史の新教科書が許可されたが,最も著しく今までの教科書と変つたのは古代歴史の部分である. 従来の教科書では,古事記・日本書紀の神話伝説からはじまつていたが,今回は考古学及び大陸の文献を研究して確実な歴史的事実と認…

【海賊版】新歴史教科書の特色

新歴史教科書『くにのあゆみ』完成を朝日新聞1946/10/20が報じ,翌21日 2面 学芸[欄][*1]に掲載された,執筆者の一人=家永三郎による解説. 太字強調は紹介者による[*2] *1:当時の朝日新聞は表裏2面,1日1回発行 *2:家永三郎「戦後の歴史教育」で註(9)に続く要約…

津田左右吉「建国の事情と萬世一系の思想」前文

今,世間で要求せられていることは,これまでの歴史がまちがっているから,それを改めて真の歴史を書かねばならぬ,というのであるが,こういう場合,歴史がまちがっているということには二つの意義があるらしい 一つは,これまで歴史的事実を記述したものと考えら…

関連図書

今井修編/解説『津田左右吉歴史論集』岩波文庫 青140-9,2006/08/17 p.278-p.322「建国の事情と萬世一系の思想」 『津田左右吉全集 第3巻』岩波書店,1963/12/17 p.450-p.473 「萬世一系の皇室といふ観念の生じまた発達した歴史的事情」 □ 津田左右吉「建国の事…

『日本読書新聞』[*1]No.348(1946/06/05) 2-1

津田博士の「建国の事情と萬世一系の思想」を読みて 「科学性と神秘性」 中西功 『世界』1946年4月号の津田左右吉先生の「建国の事情と萬世一系の思想」といふ論文が問題の論文であることは私も早く編纂者たちから□□していた. その事情は同誌に収録された編…

正木ひろし「不道徳の淵源」 『法律時報』No.728(1946/4,5月合併号)

不道徳の淵源 正木ひろし 私は弊原内閣の発表した憲法改正草案要綱は,天皇を儀礼的にもせよ残存せしめるが故に道徳的見地より反対であり,弊原内閣が憲法問題に干与すること自体が既に怖るべき不道徳だと信ずる. それらの理由の若干を,紙面の都合上,メモ式に…