13.青年團の活動(大澤生)

大正12年9月1日 余は郷里の波岡校に奉職して居た 此の日第二學期の始業式を終へ學期始めの會議も済んで一同晝食の箸を取らふとした一瞬 どどっと床板は揺らいで見る中に 屋根の瓦は落ち戸の倒るる音 硝子の破れる音物凄く生きたる心地も無つた あはただしくも御影を安全な場所に奉遷し校庭の櫻樹の下に避けて校舎を見詰めていた 此の日午後1時頃本村小濱支部長は團員50餘名を引き連れて來り頻りに至る餘震の險を冒して瓦の将に落ちんとするを取除き 室内に入りて雜然たる震後の大掃除を爲して兒童の授業に差支へなき迄に働かれた 尚歸途縣道に出でて二ヶ所の崖崩れの片付をして交通の故障を去り 1日より1週間は縣道傍にて故郷をさして歸る避難の人々の救助に一身一家を忘れ殆ど不眠不休の状態で力を盡くし負傷して歩行困難なる者は車にて隣接の村迄送り 渇せる者には飲料を與へ空腹者には焚出の握飯を與ふる等眞心込めての活動振りを發揮した 夜は又2時間目毎に各班70餘戸の各戸の警備の任に當られたので家人は安心して屋外に眠ることが出来た