2.精米機が役に立つ(總元村役場)

本村大字石神 中田中(當時29歳)は同所長田精米所の精米機運轉用發動機の破損品の修繕及部品購入を依頼せられ 8月31日本村出發横濱市某鐡工所に至り9月1日部分品を購入し 修繕品を修理中突然彼の大震災に遭遇し 忽ち家屋倒潰し下敷となり 顔面其の他に十數ヶ所の重輕傷を負ひたるも漸くにして抜け出で購入修理せる器具を携へ 直ちに歸路に就きたるも震災に依る火災は随所に起り 至る所避難民雑沓し交通自由ならず 東京市内に入りては全く修羅の巷と化し彼方此方と血路を見出したるも交通機関も亦不通途絶の状態にて顔面より流るる鮮血と身に重傷を負ひたる苦痛をこらへ漸くにして同月3日夕刻歸村し 運轉を中止居る精米機の運轉を開始することを得せしめ當時最も必要に迫られたる精米所も此の同人の苦心に依り非常に便宜を與へたり同人は今も其の當時を物語り負傷の跡歴然たるものあり