【22】p.31より

抗争は、文にされうるはずの何ものかがいまだ文にされえていないという、言語活動における不安定な状態であり、その瞬間である。この状態は否定的な文である沈黙を含んでいるが、それと同時に原則的には可能であるはずの文を呼び求めている。普通、感情と呼ばれるものがこの状態の存在を指し示している。「うまい言葉が見つからない」等々。感情がふと漏らす抗争がすぐさま係争のうちで押し殺されてしまい、感情が与える警告が無益に終わってしまうのが嫌ならば、抗争を表現しうる文をつくり、連鎖をつくるための新たな規則を懸命に探さねばならない。抗争に特有語を見つけてやり、抗争を証言することは、或る種の文学の、哲学の、そしておそらくは政治の課題なのである。