打ち消された迷信


この声明は,天皇制利用の非民主主義主義者にとっては,正に致命的であった. 天皇と一般国民とが平等の位置に立ってしまっては,彼等の利用すべき階級的の落差の余地がなくなってしまう. 既に最高司令部の数次にわたる司令によって国家神道の宣伝が禁止された結果彼等は迷信を利用することが困難になったので,頼む処はただ刑罰的の圧迫,すなわち不敬罪の存在が唯一の落差発生の根源となっているのだ. それが消えてしまったのでは,官僚その他の特権享楽階級は,懐手をして国民に命令を下すことが出来なくなるばかりでなく,過去に犯したさまざまな罪悪の裏まであばかれてしまう危険におちいるのである. 彼等が必死になって,この一線をまもらんとする理由はそこにある


おぼれる者はわらをもつかむたとえの如く,司法当局は10月19日,マ元帥の声明にこたえ不敬罪の内容は名誉毀損罪や侮辱罪と同程度にするが,不敬罪は存続させるつもりだという意企を明かにした. 恐らく日本の無条件降伏以来,政府の発表した声明中,これほど挑戦的な,捨鉢的な声明はなかったであろう


しかも最後のあがきとして,不敬罪名誉毀損罪や侮辱罪とを同じようなものだとの錯覚をあたえることによって,あはよくば最高司令部を瞞着せんとするかの如き猿智慧が働いている