【2】

本判決は経済産業大臣において遅くとも平成18年までに 福島第一原発の敷地高さを超える津波の発生を予見することは可能であつたと認めながら予見可能性の程度が必ずしも高くないものとして 原告らの主張する結果回避措置の内容については規制行政庁の専門的判断に委ねられるとしてこれらの結果回避措置を直ちに構ずるべき義務が導き出されるとは言えないとして 国の国賠法上の違法性を否定した


しかしながら本判決は原告らの主張立証に基づいて敷地高さを超える津波の発生に対する予見可能性を認めておきながら 結果としての津波のリスクを不当に低く評価した上で国の専門的裁量を殊更に強調するものであつて このような結論は いわゆる伊方原発訴訟最高裁判決(1992年10月29日判決)が判示する通り 原子力施設においては深刻な災害が「万が一にも起こらないようにするため」の安全対策が求められており 国はそのために適時かつ適切に規制権限を行使する必要があつたことからすれば 到底容認出来ない