【被告東電に対する請求について】
1.原告らの被告東電に対する主位的請求について
原子力損害の賠償に関する法律第2章の規定は民法の不法行為に関する規定の特則であり 本件事故による損害賠償に関しては 民法の不法行為に関する規定の適用はないから 原告らの被告東電に対する民法709条に基づく主位的請求はいずれも理由がない
2.原告らの被告東電に対する予備的請求について
2(1)財物損害
本件事故及びそれに伴う政府による避難指示等により 財物の管理が不可能となり又は放射性物質に暴露すること等によって財物の価値の全部又は一部が失われたと認められる場合には当該財物の失われた価値の喪失・減少分が損害となる そして 損害額を算定する際の基準となる当該財物の価値は本件事故時点における財物の時価である
2(2)精神的損害
a. 避難指示等により避難を余儀なくされた者が 住み慣れた平穏な生活の本拠からの避難等を余儀なくされたことにより被った精神的苦痛や 生活の本拠以外での生活を長期間余儀なくされ 正常な日常生活の維持・継続が長期間にわたり著しく阻害されたために被った精神的苦痛は 避難生活に伴う慰謝料として賠償されるべきである
b. 本件事故により生じる様々な精神的苦痛に係る損害のうち 避難生活に伴う慰謝料では填補しきれないものについては ふるさと喪失慰謝料と呼称するかどうかはともかく 本件事故と相当因果関係のある精神的損害として 賠償の対象となるというべきである
c. 被告東電に 本件事故の発生について故意又はこれに匹敵し慰謝料を増額することが相当といえるような重大な過失があったということは出来ない
(3)自主的避難者に係る損害
避難指示等によらずに避難した者の避難に合理性が認められる場合には 避難をした者の個別・具体的な事情に応じて避難により生じた相当な範囲の損害が賠償の対象となり得る
(4)原告45名の被告東電に対する予備的請求は原告42名につき 3億7600万7601円及びこれに対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由がある
声明