■ 著者外骨の一身

大震当日の午前 編輯部の楼上へ印刷所の主人を呼寄せて 中田博士の著書『文学と私法』の挿画の印刷が悪いにつき改刷せよと厳談中 ミリミリと来て 隣の間にあった6尺の洋装本棚が襖2枚とともに倒れたのにびっくりして屋外へ逃出し その後余震が頻来するので近傍の人々とともに谷中墓地の一隅で野宿し 明2日は前日来るはずの米屋が全焼で米を持って来ず 近所で奪合うようにして買入れた玄米を梅干壺に入れ摺木で半白にする事を担任し 夕刻からは桜木町会の招集に応じて夜警隊の配置監督役になり 不眠不休で5日間続け7日8日はくたびれで安眠 9日から本書の発行準備に着手し 12日から挿画 16日から編輯 この間毎日数回の余震 戦々兢々と強迫観念に追われつつ 原稿締切となつたのが 18日の午後3時であつた


次回からはもう少しよいものを作り上げたいと思うている 思うばかりかもしれない



⇒ 震災畫報 第二冊 id:dempax:20170829