「自由主義史観研究会」の従軍慰安婦削除要求を批判する


実際はどうなのか,私はこう考えるということを,時間が限られておりますのでちょっと早口ですけれども順番に申し上げます.


一番目ですが,従軍慰安婦という言葉が当時なかったことは事実です. しかし当時そういう言葉がなければ使っていけないとなりますと歴史はほとんど書けないと思うんですね. 例えば当時,江戸時代に自分たちの時代を江戸時代というふうに言っていたかというと,そうではないので,あとからそういう言葉がつくられるということは往々にあるわけです


現在「従軍慰安婦」に代わる用語が普及しておりませんので,こういう使い方をするのはやむを得ないのではないか,最もいいということではありませんけれども,やむを得ないかなと私は思います


当時の公文書でどういう使い方をしているかといいますと,大体そこに三つぐらいありますが「軍慰安所従業婦」「慰安婦」「軍慰安所」というふうな用語が出てまいります,したがって従軍慰安婦という言葉は戦後につくられた用語ですけれども,これに代わる用語がないということではやむを得ないという気がいたします


国際的にはどうかということですが現在は「慰安婦」という言葉ではなくて「軍性奴隷」という言葉を使うべきであるというのが定着しつつあるようです. しかし日本ではまだ定着しているとは言えませんので,これが定着するまではやむを得ないというのが私の判断であります


それから二番目,強制連行はなかったかどうかということが大きな焦点になっております. しかし私は何が問題かということを考える場合に,強制連行ということだけを取り上げるのは少し問題を狭くするのではないかと考えております


三つぐらいの問題があると思いますが,一つはどういう形で女性たちが連れてこられたにせよ,慰安所で強制があったということが問題になると思います


資料の一番目で見ていただきたいと思いますが,平成5年8月4日当時の河野洋平官房長官の談話を引用させていただきました. 傍線を引いたところに【1】【2】【3】【4】と書いてありますが,どういうことを問題にしているかといいますと,


【1】「甘言,強圧による等,本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり」本人の意思に反して集められたということが問題だと認識しています


【2】「慰安所での生活は,強制的な状況の下での痛ましいものであった」と書かれております. 慰安所でどうだったかが問われているわけです


【3】「当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり,その募集,移送,管理等も,甘言,強圧による等,総じて本人たちの意思に反して行われた」と広くとっているわけです


【4】これらが「多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である」と書かれています


元に戻りますけど,もっと広くとらえることが必要だと思うんですね. 慰安所における強制が問題ということです


それから二番目ですが,この「河野長官談話」ではふれておりませんが,未成年者を慰安所で使役したことは,どう考えても正当化出来ないことを強調したいと思います


それから三番目の,問題の強制連行ですけれども,強制連行には少なくともそこにA,B,C,Dと書きましたが四つぐらいが問題になるとは,私どもがずっと言っていることです


【A】前借り金によって親に,あるいは親族にお金を渡して,身売りのような状態で一定期間連れていくということがあります


【B】慰安婦であるということを告げないで,騙して,工場で働くとか言って連れていく場合も強制になると思います


【C】拉致や誘拐もあったということは事実だろうと思います


A,B,Cはいずれも朝鮮半島や台湾で官憲が直接手を下していることではなかったと思うんですけど,それがなぜ問題なのかは後で申し上げます


【D】官憲による奴隷狩りのような連行があったかどうかですが,藤岡先生はこの【D】だけが問題だとおっしゃっているわけですが,そういうふうに考えてみますと,これを狭い意味の強制連行と言いますと,中学校教科書で「官憲による奴隷狩りのような連行があった」というふうに書いたものは実は一冊もないわけですね. そういう意味での強制連行があったというふうには言ってないわけであります