恐るべきは彼の自己過信である


クッキーと紅茶と 2006/08/17 ■「日中戦争を直視しない現象」 id:bluefox014:20060817

日中戦争自衛戦争だったのか」という問い


1930年代当時の日本何を敵と考えていたのか--例えば1937年8月中央宣撫委員会『宣撫月報』巻頭言


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巻頭言


支那側は日本の「不拡大」「現地解決」の真意を解せずして抗日侮日,約定蹂躙の不法行為を続け,遂に日本をして剣を把るに到らしめたのである. 既にして剣を把る,支那全土を灰燼に帰せしむるはまことに易々であるが,果敢なる爆撃をなしつつも尚ほ「愛」を棄てず,非を悟り行を改めんことを祈るや正に切なるものがあるのであるが,この情,通ずるや否や,恐るべきは彼の自己過信である.


想ふに東亜全局の平和を撹乱し,自らの民衆の家を焼き日夜之を呻吟せしむる者は,重大なる誤認に基く国民党の秕政並に世界赤化を目標に先ず中国を屠らんとする共産党の謀略に乗ぜられた一部詭激なる支那軍隊であつて,一般無垢の民衆には些の科もない. むしろ八紘一宇の大理想の前には打つて一丸となるべき要員でさへあるのである.


支那側に於ては凡百の機関を通じ虚妄の宣伝を為し姦詐○謀[○は手偏に「交」]に狂奔す」とこれは植田大使の告諭の中にある言葉であるが,事実29軍潰滅による宋哲元の逃亡を視察飛行と名づけ,不拡大に基く平城引上げを日本軍敗退と称し,平津地方に於ける一目瞭然の敗滅を支那軍大勝と放送し,事情を知らぬ国民は,この虚報に捲き込まれて戦勝の爆竹をさへ揚げ,多くの外国人の面然に笑話の種を提供してゐる.


我等宣伝宣撫員は,之等不逞の放送,流言に惑はさざるやう国民に説き,日本帝国不動の方針に信頼し,経済界の変調に乗じて暴利を利らんとするを戒め,時局の真義を体得して日満支三国民の心からの提携を計り,進んで我国民の愛国心喚起のため今や乾坤一○[手偏に邸]の活躍を要請されてゐるのである.



宣撫月報vol.2(No.8)1937/8月 巻頭言【出典:15年戦争極秘資料集補巻25宣撫月報 第1冊1937/1-8(不二出版 2006/01/25) isbn:4835056469
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おなじく『宣撫月報』vol.3(No.2)1938年2月掲載論文[標題のみ紹介]

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大橋忠一「世界赤化工作と民族協和の大使命」

内務省警保局「人民戦線運動の本体」
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国際共産主義運動の世界赤化工作」*1とその走狗とみなされたものたちに対する「自衛戦争」であったのではないか.


 

*1:ユダヤ陰謀論に至る様々な被害妄想を伴う世界認識については たとえば武藤貞一『評論集 戦前篇』 動向社 1963 参照