統一戦線中の共産党

日本共産党は,天皇制廃止と民主共和国の樹立を自己の民主主義革命の基本任務としている. 問題はこれをいかに遂行するかである. この目的遂行の主たる手段が民主統一戦線である

このとき,共産党は自己を独自に組織し,かつ自己の独自性を統一戦線のなかに解消してはいけない. これは原則である. しかし,これは民主連盟に共産党のすべての基本スローガンを押し付けようということではない. 天皇制を打倒して,民主共和国を造ることは共産党の民主革命における最終の目標ではあるが,今日,民主連盟にこのスローガンを押し付けることは不得策である

その理由は

(1.) 天皇制には今日二つの面がある. 一つは絶対専制制度の長としての天皇であり,他の一つは天皇に対する日本国民の長年の半宗教的崇拝である

前者に反対し,後者に対しては充分の考慮を必要とする. 特に社会ファシスト共は,国民のこの心理を巧みに利用して,共産党との統一戦線を拒否せしめ,統一戦線を分裂せしめんとしているとき,われわれはその名にこだわってはならない. 民主政治の徹底,人民政府の樹立により,われわれは実質的に,天皇制を打倒しうるものである

(2.) 同時に,今日の日本民主主義革命発展経過の特徴である

一挙に武装暴動によって天皇制を打倒するのではなく,徐々に,種々の段階を経て,革命は進行している. これは「外」からの力によって革命が進行している結果である

「外」からの力により先ず軍閥が打倒され,政治の自由が得られた. これは民主革命の大きい進展であるが,しかし天皇制はまだ打倒されていない

10月5日の政治犯釈放によって,日本の民主革命は第一段階を獲得したのである

つぎは民主連立内閣の成立により,日本の天皇制を廃止せねばならない. しかもなお,われわれの力のよわい場合は天皇制はまだ残っているかも知れない

われわれはこの人民政府を土台として,天皇制を終局的に人民投票によって打倒しうるものである. かくのごとく民主革命過程が種々の段階を経て行なわれるため,われわれはその各段階に応じた中心的任務を提出する必要がある. 10月5日までは,政治的自由を与えよ,政治犯を釈放せよ,が中心任務となり,今日では民主連盟と民主連立内閣を樹立せよ -- はその中心任務となる. かくしつつ実質的に天皇制を廃止しうるのである

ただし,このことは共産党が天皇制廃止の必要を大衆に向って説得・宣伝することが不必要となったことではない

共産党は具体的な闘争を通じて天皇制の廃止の必要を説得し,宣伝するのである. しかしその場合,統一戦線の綱領と自己の綱領を混同してはならない