統一戦線の指導者


統一戦線の指導者はプロレタリアートである. しかし同時に小ブルジョアジーが積極的に民主化闘争に参加するとき,彼らにもまた,政治指導力が生れる. しかしこれはあくまでもプロレタリアートの統一戦線に賛成し,独占ブル等の妥協コースに反対するという基盤の上においてである


日本社会党は労働者,農民,小ブルの連合党であって,そのなかで,小ブルが指導権を持っている. それは「社会民主主義」を主なる指導理論としているが,この社会党は今日の民主闘争においては一つの進歩性を持っているゆえに,社会党は民主統一戦線に参加しうる党であり,かつ,それ自身として,大衆を指導しうる党である


もちろん今日この党はなお社会ファシストによって牛耳られ,前述の妥協コースによって災いされているが,大衆の圧力が強化すれば,この党は必ず革命化されうる


共産党は労働者階級の党であり,かつ決定的な民主闘争の指導者である. この党の推動力なくしていっさいの真の民主闘争はない. それが社会党と異なる点は,同じく農民,小ブルに絶大な影響力を持ってはいるが,プロレタリアートの完全なヘゲモニーとその独自の究極目標 -- 社会主義および共産主義 -- を堅く堅持していることである


これは民主運動の最大の推動力であるが,しかし同時にこの党が早急にその力を結集していない事情の存在することも事実である


ゆえにわれわれはこの党の今日の現実をよく評価することも必要である. それはプロレタリアート自身が重大な弱点を持っていると同様に,必ずしも成立すべき民主統一戦線においてただちに圧倒的な比重を占めうるとはかぎらないことである


むしろ,その比重が当初においてはいかに小さくとも,この党のイニシアチブと指導なくして統一戦線はできないのである


その意味でこの党は民主統一戦線の最大の支柱である. 結論的に言って,この党は統一戦線のイニシアチブをとり,その指導者であるが,唯一の独占的指導者ではない


社会民主主義者およびその他の民主主義者の今日における指導力をも承認すべきである. そして,この日本の民主統一戦線が共産党一党の独占的指導でなく,他の民主政党と協力して指導に当ることは今日のもっとも重大な特質である


1935-37年当時の西欧の「人民戦線」は反ファッショ統一戦線であるが,同時にそれは基本的には反独占資本的統一戦線であり,基本的にはほとんど共産党の独占的指導下にあったのである. しかるに日本の民主統一戦線がさらにそれよりも広範であるのは,他の民主政党 -- 特に日本社会党にも一つの政治力が存在し,共産党がこの党と協力して統一戦線を形成しうることである


日本社会党との統一戦線においては,社会党の進歩性を認めて,協同するか,それともその党としての進歩性を認めず,一時この党の下に大衆が存在するために,その大衆を奪取する必要上,それとの統一戦線を張るかの問題がある. その今日の進歩性を認めない場合にはその党の影響下の大衆を獲得することが課題となり,下からの統一戦線のみが問題となって,党と党との間の合作は問題とならない. したがって合作の提議をなしたとしても,それは,一時的個別的なものである


これに反してその党の進歩性を認める場合は下の大衆のあいだの合作を行うだけでなく,党の中堅幹部とのあいだの合作を緊密化し,協力して大衆を指導しようとする. この合作は比較的恒常的なものとなる. 共産党社会党の発展を歓迎する. それはこの党の勢力の増大は,すなわち,民主勢力の増大だからである


そして共産党のこの統一戦線に対する態度は誠心誠意の合作である


今日の事情から見れば後者が正しいと思われる



id:dempax:19451105⇒「民主連盟の綱領」に続く