『近きより』vol.9 No.6(1945年8月号) 家永三郎責任編集『日本平和論大系 12 正木ひろし,清沢洌』日本図書センター,1994/4/25 p.253
人生断章
【1】敵は有色人種を奴隷にせんとすと聞くこと久し. 奴隷とは人間に対して人格を認められざるもの,その存在は全部奴隷主の意のままとなるものなり. 奴隷は最少限度の食料と一定範囲内の自由を与えられ,生命は奴隷主のために捧げしめられる
家畜は奴隷と相似たり. 牛馬は死ぬまで働き,その肉までも食われる. 番犬は,それを逃げないように番をなす. 闘犬は,飼い主の興味のために死力をつくして闘わしめられる. 印度兵の如し
【2】「太く短く」「あとは野となれ山となれ」という考え方,これほど危険な思想はない. しかもこの思想を罰する法律もない
森林を焼いて畑を作った古代人は,生きんがためには何事をもなした. 現代人は享楽のためには何事をもなすことあり