【要約】

ぼくらの時代の偉大な真実(それの認識だけではまだ役にたたないが, それを認識しないで, ほかの重要な真実を見つけだすことは不可能だ)とは, 生産手段にかんする所有関係が暴力でしっかり保たれているため, ぼくらの大陸が野蛮のなかに沈みこみつつあるということだ. こういうばあい,なぜぼくらがこういう状態に陥るのかをはっきりさせずに, ただ勇ましいことを書いて, その結果, ぼくらがそのなかへ沈みこみつつある状態は野蛮なものなのだ(それは事実だ)ということがはっきりしたとしても, それはなんの役にたつのだろうか. ぼくらは, 所有関係をいまのままにしておこうとするから拷問されるのだ, と言わざるをえない. もちろんのことだが, ぼくらがこう言えば, 所有関係は拷問なしでも維持しつづけうる(それは真実ではない)と信じているために, 拷問には反対の立場をとる多くの友人を失うことになるだろう


ぼくらの国の野蛮な状態について, ぼくらが真実を言わなければならないのは, この状態を消滅させうるように, つまりそれによって所有関係が変えられうるようにするためである


ぼくらはさらに所有関係のもとでもっとも苦しんでいて, 所有関係の変革に最大の関心を持っている人たち, つまり労働者たちと, 利潤の分け前にはあずかっているにしてもじっさいには生産手段の所有権を持たないので, ぼくらが労働者に同盟者として紹介できる人たちに真実を話さねばならない


そして五番目にぼくらは策略を用いなければならない


しかもこれら五つの困難のすべてを, ぼくらは同時に解決しなければならない. なぜなら, ぼくらは野蛮な状態のもとで苦しんでいる人たちのことを考えずに, 野蛮な状態についての真実を究明することはできないからだ. そして, おそってくる一つ一つの臆病心をたえず払いのけながら, 知識を利用しようと待ちかまえている人たちのことを考えて, 真実のつながりを求める一方, ぼくらはまたさらに, そういう人たちの手にそれが渡れば武器になるように, 真実を手渡すことを考えねばならない. それと同時に, これを手渡すさい敵に見つかったり妨げられたりしないように策略をめぐらす必要がある


作家は真実を書くべきであると要求されるばあい, これだけのことが要求されているのだ


【1935】