東京新聞2017/02/02 29面【特報】本音のコラム

保守革命第2弾

    竹田茂夫


トランプ米大統領の入国禁止令に反感と抵抗が広がっている。策定したのは「最高戦略責任者」のスティーブン・バノン氏らの側近グループだが、相応の手続きなしにいきなり公布するやり方に異常・無能・予測不能といった批判が向けられている


戦略はともかく政権の理念をバノン氏に求める論調が多い。労働者階級出身でウォール街を経てハリウッドの映画製作者になった同氏は一貫して反エリート主義であり、政治を善と悪の暴力的闘争として捉える。レーガン保守革命賛美の映画でも単純で危険な世界観を披歴する。民主主義には出番がないのだ。極右ニュースサイトでは運営者として大衆操作の技術に磨きをかけるようになる。大統領就任演説は貧困や産業の疲弊を「米国の殺戮」と表現したが、バノン氏の劇場型政治観がここにも表れている


入閣で保守の縁辺から一躍中心に踊り出たわけだが、ナチスになぞらえるとゲッペルス宣伝相の役回りか


米国社会は格差拡大と閉塞感に苦しんでいる。庶民の苦境はよく知られているが、一部超富裕層にはファシスト独裁政治や社会の崩壊さえ見据えた一種の終末思想が広がり始めている。彼らは、核戦争や世界的疫病や階級闘争から逃れるためにニュージーランドに不動産を買い始めているという