(まえおき)

「文学を売り上げで計るな」と訴え続け、豊饒な文学の言葉で経済最優先の新自由主義が及ぼす害悪を突き詰めてきた作家の笙野頼子さん。新刊『植民人喰い条約 ひょうすべの国』では、TPP(環太平洋連携協定)発効後の日本の惨状を描き出し、闘いののろしを上げました(平川由美)


病人殺すな!赤ちゃん殺すな!田畑無くすな!こども、たべもの、くすり、ことば、みんな、人喰いのえじき!TPP!TPP流せ!TPP!TPP流せ!憲法戻そ、TPP流せ!原発止めよ

巻頭でTPP反対を高らかに宣言します


多国籍企業の利益のため、自由貿易の名の下に関税や規制を撤廃し、日本の医療・農業・食の安全・雇用・教育・福祉を破壊するTPP。膠原病を抱える笙野さんにとっても、命を脅かす恐怖の条約です


これまで『私』というものを追求することで問題提起をし、身体から発する言葉で国家や市場経済の横暴に対抗してきましたが、今回ついに他者の不幸を書きました。私一人の不幸だけではなく、国民全員の不幸を書かなければ、国全体をのみ込むTPPの災厄は書けないと思いました