【B3】『文芸懇話会』Vol.1(7)[特集: 日本文芸院論]p.12⇒青野季吉「日本文芸院の問題」


私は文芸懇話会が松本学氏の指導方針にもとづき,プロレタリア文学を排除するといふ態度をとり,資金を出す方がそうなら当分致し方ないといふような精神に立つ以上,その存在そのものが複雑な全体をもつ現代の文学に対して一つの悪を働いていると信じている. もし文芸懇話会が日本の文芸に貢献しようとか,日本文芸院として出て来ようとするなら,何よりも先ずその松本氏の指導方針を撤廃して複雑なる現代文学の正しい認識とその基礎に立つ可きである. 万事はそれからである. ところが文芸懇話会は松本氏を離れては立つて行かないといふ「運命」があるのだから,何とも始末に負へないのである