【研究・論評】松本学と日本文化聯盟・文芸統制に関して


【A1】『松本学日記』解題(伊藤隆)


【A2】『現代史を語る(4)松本学』解説…黒澤良「松本学内務官僚・運動の組織者」


目次


1. 生い立ちと岡山県人脈


2. 二つの顔-- 内務官僚と運動の組織者


3. 牧民官生活


-入省から土木局勤務まで


-中国・欧米視察


-神社局長・県知事


-警保局長--陛下の警察官


- 宇垣擁立運動


4. 運動の組織者としての松本


- 日本文化運動


- 国際港湾協会と世界貿易センター

同時代の評価として【B1】戸坂潤と【B2】出版警察資料, 【B3】青野季吉 を挙げておこう



【B1】戸坂潤[*1]


【B1a】『現代唯物論講話』【白楊社,1934】第四部文化論(4-9)現代文化の状勢(4-9-2)文芸統制現象の分析【全集III-p.386】


【B1b】『日本イデオロギー論』【白楊社,1935】9 文芸統制の本質 - 現代日本の文芸統制の種々相を分析する【全集II-p.316】[*2]


【B1c】『現代日本の思想対立』【今日の問題社,1936】


(4)文化統制の種々相【全集V-p.245】


(19)統制主義の名目と実質【全集V-p.308】


【B1d】『世界の一環としての日本』24. 出版現象に現れた時代相【全集V-p.143】[*3]


官製の機関は文筆業者の著作権擁護といふよりも寧ろ日本に於ける文芸出版物の統制指導の機関を意味するのだといふのが世間一般の解釈であった. 松本学氏の手になる文芸懇話会の官許版だといふわけだ. この文芸懇話会の文芸統制の社会的役割が,文芸賞第一回授章問題をめぐって,佐藤春夫によつて暴露されたことは世間の記憶に新しいことである. また松本氏の本質に就いては,其の邦人主義第五インターの主張を見れば明らかである

【B2a】内務省警保局「【研究】新聞雑誌を通じて観たる文芸統制問題」【内務省警保局『出版警察資料』No.3 1935/08】


B2b内務省警保局「【研究】雑誌に表はれたる『官僚』に関する論調」【内務省警保局『出版警察資料』No.5 1935/10】


【復刻】『出版警察資料 2 3-7号』不二出版,1982/08/30 [注*]全15冊(1〜47号)



【B3】『文芸懇話会』Vol.1(7)[特集: 日本文芸院論]p.12⇒青野季吉「日本文芸院の問題」


私は文芸懇話会が松本学氏の指導方針にもとづき,プロレタリア文学を排除するといふ態度をとり,資金を出す方がそうなら当分致し方ないといふような精神に立つ以上,その存在そのものが複雑な全体をもつ現代の文学に対して一つの悪を働いていると信じている. もし文芸懇話会が日本の文芸に貢献しようとか,日本文芸院として出て来ようとするなら,何よりも先ずその松本氏の指導方針を撤廃して複雑なる現代文学の正しい認識とその基礎に立つ可きである. 万事はそれからである. ところが文芸懇話会は松本氏を離れては立つて行かないといふ「運命」があるのだから,何とも始末に負へないのである

国文学研究者による【C1】【C2】【C3】【C4】及び歴史学研究者による【D1】〜【D10】



【C1】■平野謙『文学・昭和十年前後』文藝春秋,1972/04/20


「《人民文庫》の問題」p.263で《人民文庫》の批判の対象として文芸懇話会, p.350「小林秀雄中野重治」に中野重治による文芸懇話会「攻撃」




【C2】● 和田利夫『昭和文芸院瑣末記』(筑摩書房,1994/03/20)


ISBN:4480823085




【C3】●▲高橋新太郎「訓化と統制/装置としての『文芸懇話会』」


●初出…不二出版【復刻】『文芸懇話会』別巻『解説・総目次・索引』のうち「解説」1997/06




【C4】吉野孝雄「『文学報国』という名の言論統制/戦争と日本文学報国会」


KAWADE道の手帖/作家と戦争/太平洋戦争70年』河出書房新社,2011/06/30 p.15


作家と戦争---太平洋戦争70年 (KAWADE道の手帖)


宮武外骨研究者の文芸懇話会評価は厳しい⇒【海賊版id:dempax:20150701




【D1】馬場修一ファシズムと反ファシズム/1930年代日本知識人の場合」


歴史学研究』No.453(1978/02)



【D2】江口圭一編『体系・日本現代史 1 日本ファシズムの形成』日本評論社,1978/11/30⇒粟屋憲太郎「ファッショ化と民衆意識」



【D3】●海野福寿「1930年代の文芸統制 - 松本学と文芸懇話会」


駿台史学』No.52 1981/3月号



【D4】▲小田部雄次「日本ファシズムの形成と『新官僚』- 松本学と日本文化聯盟」


日本現代史研究会『日本ファシズム(1)国家と社会』大月書店,1981/11/24



【D5】●▲粟屋憲太郎・小田部雄次編集・解説『資料 日本現代史9 2.26事件前後の国民動員』大月書店,1984/01/23 第二部/新官僚と国民動員


粟屋憲太郎解説



【D6】林博史「日本ファシズム形成期の警保局官僚」[*4]


歴史学研究』No.541(1985/5)p.1 - p.16



【D7】粟屋憲太郎『15年戦争期の政治と社会』大月書店,1995/01/20⇒日本文化聯盟の結成(p.136)[*5]


十五年戦争期の政治と社会



【D8】大日方純夫『近代日本の警察と市民社会筑摩書房,2000/04/25


p.246 p.248 p.249


近代日本の警察と地域社会



【D9】古川隆久『昭和戦中期の議会と行政』吉川弘文館,2005/04/10


p.228 p.238 p.240 p.251 p.284 p.296


昭和戦中期の議会と行政



【D10】副田義也『内務省の社会史』東京大学出版会,2007/03/30


p.609


内務省の社会史









*1:『戸坂潤全集』頁は勁草書房版による

*2:戸坂潤『日本イデオロギー論』岩波文庫ではp.186

*3:林淑美『増補世界の一環としての日本2』平凡社東洋文庫 p.48
増補 世界の一環としての日本2 (東洋文庫)

*4:「はじめに」で

渡辺治天皇制警察の理念」『法学セミナー増刊13/現代の警察』日本評論社,1980

■三輪泰史「日本ファシズム形成期に於ける新官僚と警察」『日本史研究』No.252(1983)

が先行研究に挙げられている

*5:【D2】「ファッショ化と民衆意識」の再録