警察協会大阪支部『隠語構成の様式扞其語集』(「扞」の旁は「キ」)(非売品),1935/6/?

第一篇 隠語の構成様式(理論篇) 第二篇 現在の隠語 の二部構成


隠語,即ち「かくしことば」は


自己の情意思を完全に対者に伝え,且つ,局外者に対しては全く了解し能わざる言語であれば,隠語の使命は足るわけである…隠語にして其使命を満足せぬ如きものは当然一般語と化して仕舞ふことは明らかである. 例えば犯罪語の「いんちき」「いかさま」等であるが


これが一般化されて居る現今に於ては,最早隠語とは云へぬ

と隠語を定義し,一般語⇒隠語の作り方を次のように分類し説明していく


■理論的方法による隠語


(1)音節の転倒


(2)音節の省略


(3)音節の添加


(4)変読


(5)分析


(6)外国語其他引用


■連想作用による隠語


(1)謎的様式


(2)形容的(換言的)様式

「ぴい」は外国語其他引用法で説明される


『近代庶民生活誌3世相語・風俗語』 p.414


ぴい(娼)


支那語,娼=(ぴい)より出たもので,娼婦を云ふ. 転訛して「びり」とも云ふ


第二篇現在の隠語では


犯罪者及露店商人等に使用されている犯罪語


舞台俳優落語家等に使用される役者用語


商業者に使用される商用隠語


花柳界及其の道の通人に用ひられる花柳語


不良青少年に用いられる不良青少年語


僧侶隠語


女房語

に分類し説明していく


●不良青少年語


此の語は隠語中最も複雑な多種の隠語を持つている. 普通不良青少年語を大別して軟派硬派と呼んでいるが軟派と云ふものは主として女色方面に関してのもの即ちエロ派とでも云ふべきもの硬派は掻っ払い脅迫恐喝等暴力的なるもの所謂ぐれ即ちテロ派とでも云ふべきものである

「ぴー」はテロ派不良青少年語として扱われている


『近代庶民生活誌3世相語・風俗語』 p.449


ぴー


娼妓を云ふ. 「びり」とも云ふ