斎藤美奈子/本音のコラム「セクハラ再考」

出典…東京新聞2014/07/09(29面/特報)

セクハラ再考

斎藤美奈子


セクハラという言葉は軽いという人もいるけれど,私は軽いと思っていない. セクハラは「重い言葉」なのである


ウソと思うなら,身近にいる男性に直接「いまのはセクハラだよ」と指摘してごらん. 私はこの言葉をいままでに三回発したことがある. 三回とも相手は烈火のごとく怒った. ひとりは「どこがだよ」と凄み,もうひとりは露骨に不機嫌になって座がしらけ,三回目はみんながしゅんとなって会議が滞った


セクハラという語が新語・流行語大賞の一位になり,世間的に認知されたのは1989年,今年は25年に当たる. この言葉によって「あれはセクハラだったんだ」と思い当たった女性は多かった. 言葉ができて,はじめて事態がクリアになったのである


だが,この語が広く受け入れられるまでには,長く地道な戦いが必要だった. 潮目が変わったのは99年の「横山ノック強制猥褻事件」くらいからだろう


セクハラという語は女性にとっての武器である. が,武器だけに使い方には慎重を要する. 言われた人が怒るのは,人格を否定されたと感じるからだろう. 都議会のやじ問題にはガックリだけど,状況は変わりつつある. セクハラを軽いという人は,直接言われた経験がないか,自分はセクハラなんかしないと信じている人じゃないのかな