【海賊版】竹田茂夫『プライドと堕落』

出典…東京新聞2014/06/12(27面)【特報】本音のコラム

プライドと堕落

竹田茂夫


日本原子力学会の元会長で,原発を推進してきた田中知氏が原子力規制委員に指名されるという



規制当局が業界と同じマインドセットでものを考え,カネとコネの一蓮托生の関係に入ることを「規制の虜」という



国会事故調査委員会は,規制当局が原発業界の虜になっていたと痛烈に批判した. 田中氏の場合には,推進側が規制する側に回るのだから,規制の虜というより回転ドアとでもいうべきか



俎上に載せられているのは,氏の主観的な学問的良心ではない. 最低限必要な規制委の中立性の形式さえも無視して恥じない現政権のお膳立てを利用し,学会の重鎮としての知的・社会的既得権を守ろうとする客観的状況のグロテスクさだ



専門家の保身がいかに水俣病問題をこじらせてきたか. 津田敏秀氏は『医学者は公害事件で何をしてきたのか』で彼らの堕落を暴露している



水俣病の認定基準(1977年条件)の誤りが,多くの未認定患者と長引く紛争と苦痛を生み出してきた. その過ちを自覚しながらも,公式には認められない専門家たちは,審議会で四苦八苦して屁理屈をひねり出そうとした



自分の体面が患者の救済より大切なのだ. 原発の危険性や核燃料サイクルの破綻は明らかなのに専門家はなおもしがみつく. 矜持はどこにいったのか