表現の自由は芸術に不可欠/漫画家 森本サンゴ
私は首相の靖国参拝を否とする者でもないし、改憲論議も大いにするべきだと思う。それでも東京都美術館が、展示中の造形物が政治的だと撤去や手直しを求めたことには到底納得できない。政治的な表現を無効とするなら、ピカソのゲルニカなど相当数の美術品を展示できなくなる。
芸術とは何か? それは狭義においては異議申し立てであり、それを抜いては芸術は成り立たない。故に、憲法で表現の自由が保障されているのではないか。言論と表現の自由。これは民主主義の根幹を成すもので、われわれはここから一歩もひいてはならない。
と同時に、他からのクレーム、一種の圧力に屈した東京都美術館は美術館としての哲学を持ち合わせていない、レベルの低い美術館となってしまった。
東京新聞2014/03/04 5面【発言】より転載