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届かない被災者と配りきれない町内会長?毎日新聞月曜日夕刊記事
東日本大震災:石巻市,物資の街頭配給中止 影響懸念も http://mainichi.jp/photo/news/20110509k0000e040014000c.html
東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県石巻市は8日、自衛隊に依頼して実施していた食料や生活用品の街頭配給を取りやめた。「避難所には物資を届けている。街頭配給を回り余った物を転売する人もいて、公平性の問題がある」と市は理由を説明するが、ライフラインが復旧していない地区では、炊き出しや配給に頼って自宅で暮らす住民も多く、街頭配給取りやめの影響が懸念される。
市によると、街頭配給は、津波被害を免れた自宅などで避難生活を送る住民を対象に5カ所で実施。また、町内会長を通じておにぎりやパンなどを各戸に届けてきたという。
しかし、町内会長の中には「物資を配りきれない」「スーパーマーケットが再開したからもういい」などの理由で配達を断る人もいたといい、物資が行き渡っていたとは言い難い状況だった。
一方、街頭配給には「(被災していない地区から)車で来て配給の列に並ぶ人がいたり、何カ所も回って余った物資を転売する人がいる」という指摘が市に寄せられ、市の今回の決定となった。
だが、街頭配給に頼る住民は少なくない。津波で大きな被害が出たJR渡波(わたのは)駅前には4月30日早朝、配給を求める住民約500人の列ができ、昼過ぎまで途切れなかった。並んでいた阿部敬子さん(63)は「早い人は朝5時から並んでんだよ」と話した。津波で2人の姉を亡くしたという阿部さんは、浸水を免れた自宅2階で暮らす。この日、手にしたのは、ニンジン▽ピーマン▽スナック菓子▽ソーセージ▽レトルトカレー▽靴下▽ジュース。「朝から3時間も配給に並び、ボランティアの炊き出しで何とか生きている」とこぼした。
街頭配給に毎日並ぶという同市垂水町に住む30代の夫婦は「市は町内会長任せ。市はもっと細かく市民の状態を把握すべきだ」と怒りを隠さない。
市が懸念するように、被災を免れた地区から配給に並ぶ住民もいる。車で配給場所に通う女性(60)は「自宅に大きな被害はないが仕事を失った。失業保険では食べていけない。もらえるものはもらいたい」と明かす。
市産業部は「街頭配給を取りやめた状況を見て、今後の方針を決めたい」と話している。【佐野格】