巡り巡って巡れ巡れば恥ずかしい日本語
good2ndさんの"ライブドアPJ 池野徹氏の記事の「国語」の問題" http://d.hatena.ne.jp/good2nd/20070625 を真似してというわけではありませんが,某政治団体の宣伝文書を検討してみます. 最近お行儀の悪い投稿ばかり[*0]だったので,『しんぶん赤旗』風にデス・マス調で書いてみましょう.
[*0]http://ianhu.g.hatena.ne.jp/bbs/24/39 , http://ianhu.g.hatena.ne.jp/bbs/24/52 ちなみに「血の海に浮かぶ犬の挽肉」は70年代内ゲバ党派の機関紙一面に踊る「天皇崩御」並みにどでかい活字の見出しのモノ真似.
『右派系マルと』見物人(watcher)必読サイト 草莽崛起 - PRIDE OF JAPAN "私たち地方議員は,かつて幕末の坂本龍馬らが幕藩体制を倒幕した草莽の志士のごとく,地方議会から「誇りある国づくり」を提唱し,日本を変革する行動者たらんことを期す.(平成17年5月30日)"と掲げる誇り高いblogの2007年06月26日記事「沖縄戦集団自決の記述を巡る反対運動を巡って-集団自決事件を巡る軍命令の定義」より抜書き
沖縄戦集団自決の記述を巡る反対運動を巡って-集団自決事件を巡る軍命令の定義
[...]
またこの間のNHK番組の「クローズアップ現代」での沖縄集団自決事件のとり扱いも,米軍上陸に当って,米軍の蛮行に恐怖した住民が追い詰められることによって,日本軍から手榴弾を受け取ったことをもってして,軍の関与や体験者の証言をこれでもこれでもか出す[引用者注:原文ママ「これでもかこれでもかと出す」の打ち込みミスであろう. 以下,揚げ足とりになるので打ち込みミスをいちいち指摘しません]ことによって,結局住民を守るべく使命を帯びた軍が住民に銃口を向けたと結論づけた.
これから戦争が起きた場合でも軍が国民に対して銃を向ける可能性はないとはいえない,だから戦争反対を訴えなければならないとして,およそ,梅澤隊長の証言や集団自決冤罪訴訟の原告側の主張は,単に触れただけであり,明らかな偏向報道であった.
一体,どうしてこうなるのであろうか. 曽野綾子氏の「ある神話の背景」によれば,沖縄タイムス社の『鉄の暴風』の発刊から大江氏の『沖縄ノート』などに至る,この事件の核心は全て『鉄の暴風』の孫引きであることが明らかなにされた. [原文ママ:『鉄の暴風』の記述(≪全て≫の構成要素ですよね)が『鉄の暴風』の孫引き??これも揚げとりかな]
[...]
「軍命令」という軍が正式に文書の形で出したのかどうかということと,住民が米軍の虐殺を恐怖して既に自決することを覚悟して,追い詰められて限られた風聞によって,自決をしたということとは歴史の上では同じであるとは決して言えまい.
このことが曖昧となっているが故に,未だに沖縄県民の中には左翼勢力に煽動されることによって自決が起きる温床は日本軍が存在したことと感情的に結論づける心的構図があるように思われる.
幸いにも安倍首相は検定意見の修正はないとしたが,検定そのもの,世論の圧力,ましてや外国勢力,マスコミの圧力によって学習指導要領の通りできないものとすれば,それこそ教科書の記述についての裁量も国ができないこととなってしまう.
いずれにせよ,沖縄戦集団自決は軍命令があったのか否かは,冤罪訴訟の原告だけでなく,日本の近現代史について,日本人自らが物語を語れるか否かの試金石なのであり,重要な岐路にあることを確認する必要がある. (丸山) http://prideofjapan.blog10.fc2.com/blog-entry-924.html
「反対運動を巡って-集団自決事件を巡る軍命令の定義」の標題と中身がどこかずれていますが,それはよしとしましょう.
ひとさまの文体をああだこうだ言う資格はありません*1が,それにしてもトホホな文章です.
未だに沖縄県民の中には左翼勢力に煽動されることによって自決が起きる温床は日本軍が存在したことと感情的に結論づける心的構図があるように思われる
何が誰によって「思われ」ているのか?「左翼勢力に煽動されることによって自決が起きる」「温床は」「日本軍が存在したこと」?? いくつかの解釈から残るのは a,bのふたつ.
[解釈a]左翼勢力に扇動されることによって≪自決が起きた原因は日本軍が存在したこと≫との感情が未だに沖縄県民の中にある.
[解釈b]≪自決が起きた原因は日本軍が存在したこと≫との感情が未だに沖縄県民の中にあるのは,左翼勢力の扇動が原因だ.
ノーベル賞作家大江健三郎並みの日本語になっているので,半日日本人*2のあたしには,どちらを言いたいのか理解不能*3な文体 *4.
老婆心ながらもう一点,日本/日本人の誇りを主張したいのならば,「PRIDE OF JAPAN」なんて安っぽいピジン語をデカデカと並べない方がよろしいのではないでしょうか? 英米両帝国への劣等感(こむぷれっくす)の悪臭が匂い立ちます*5.
[ひとつひとつ検討してはきりがないので要点をまとめます]
小説家が思考の筋道そのまま投げ出すようにぐねぐねどろどろした大江的文体で小説や雑文を書くのは趣味の問題ですから悪いことではないでしょう. また,ぐねぐねどろどろを追いかけるのが好きな読者も,また,わからない文章を有難がる読者も一定数おられるから営業上もかまわないでしょう.
しかし,
政治団体の宣伝文書は読者にわかり易い文体を優先した方がよいかと思われます. ポピュリズム政治団体の文章がわかりにくいことは,読者に自分の頭を使わせることになりますのでよいことではありますが,扇情的政治団体にとっては不利となりかねません. ≪赤か白か≫≪敵か味方か≫≪愛国か反日か≫の 「馬鹿にもわかる」 「読まなくてもわかる」二項対立を読者に与えて思考停止させる必要があります. また扇情的政治団体でなくとも, 読者に伝える努力(例えば創価学会公明党の『聖教新聞』のように振り仮名を付けるだとか)に欠けるように見えてしまっては損でしょう. ≪郵便ポストが赤いのも電信柱が高いのもみんな赤色コミンテルンと北朝鮮の陰謀よ≫では説得力が無いのです. *6
内容=あまりに馬鹿馬鹿しくて,検討の値打ちもない=については以下およびそのリンク先を参照下さい.
大江健三郎・岩波書店裁判支援連絡会 http://www.sakai.zaq.ne.jp/okinawasen/
大江健三郎「受任しない 戦争,記憶しつづける力を」(朝日新聞2005/08/16) *7 http://blog.zaq.ne.jp/osjes/article/31/
沖縄平和ネットワーク首都圏の会 http://d.hatena.ne.jp/shutoken/
ni0615「集団自決 軍命令は創作の根拠なくなる 」 http://ni0615.iza.ne.jp/blog/entry/203973/
去る3月30日,文部科学省は,平成20年度から使用される高等学校教科書の検定結果を公表したが,沖縄戦における「集団自決」の記述について,「沖縄戦の実態について誤解するおそれのある表現である」との検定意見を付し,日本軍による命令・強制・誘導等の表現を削除・修正させている.
その理由として同省は,「日本軍の命令があったか明らかではない」ことや,「最近の研究成果で軍命はなかったという説がある」ことなどを挙げているが,沖縄戦における「集団自決」が,日本軍による関与なしに起こり得なかったことは紛れもない事実であり,今回の削除・修正は体験者による数多くの証言を否定しようとするものである.
また,去る大戦で国内唯一の地上戦を体験し,一般県民を含む多くのとうとい生命を失い,筆舌に尽くしがたい犠牲を強いられた県民にとって,今回の削除・修正は到底容認できるものではない.
よって,本県議会は,沖縄戦の実相を正しく伝えるとともに,悲惨な戦争を再び起こさないようにするためにも,今回の検定意見が撤回され,同記述の回復が速やかに行われるよう強く要請する.
以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する.
平成19年6月22日
沖縄県議会
沖縄タイムス 2007/06/24 「集団自決」証言次々 http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706241300_02.html
[おまけ]
渡嘉敷(とかしき)島の場合は曽野綾子氏の『ある神話の背景』(昭和48年)によって全面否定され,赤松嘉次守備隊長はむしろ「自決するな」と制止した事情が明らかになった.
座間味(ざまみ)島の場合も,自決を指示したのは村の幹部で,そのための手榴(しゅりゅう)弾をくれという要請を梅沢裕守備隊長は拒絶し,谷間で生きのびてくれと指示した事実が明確となり,県史もその線に沿った訂正をすませている.
太陽 | URL | 2007/06/25/Mon 09:42 http://dj19.blog86.fc2.com/blog-entry-88.html#comment
(1)(2)の何が明確になったのかが曖昧な文章なので,意味不明となっているように思われます.
(1)何が≪全面否定され≫たのか.
(2)何が≪明らかになった≫のか.
旧軍関係者の証言だと,裏付けもなしに採用してもらえるんですね.*9
ていねいっぽい言葉使いって疲れますわ. どうせ襤褸が見えてるのに. おわり
改定来歴&/or追記:
2007/06/28 01:30「馬鹿にもわかる」→「読まなくてもわかる」
2007/06/28 01:30 http://d.hatena.ne.jp/Stiffmuscle/20070623 によれば 「この文の"professional camp follower"が、ネットでちらほら見かける「追軍売春婦」の語源でしょうね」との由. 日本人の誇りを喚きたてるみなさんって追米/従米なんですね.
*1:自分の書いた文章をあとから読んで,≪こいつ何が言いたいんだ?≫と言いたくなることがしばしあります.
*2:1日の三分の一ほどを中国人労働者の中国語風日本語の中で暮らしています
*3:どっちでも構わないが文頭に≪このことが曖昧となっているが故≫=原因とありますので,解釈bではおかしくなってしまいます. ≪左翼勢力に扇動されることによって≫は単なる枕詞なので無視すべきかもしれません
*4:大江的な悪文が平然とはびこる温床は戦後民主主義すなわち日教組の反日教育と現行憲法の個人主義の価値観があるように思われます
*5:恥知らずで,誇り無き日本人が増殖する温床は日教組の反日教育と現行憲法の個人主義の価値観があるように思われます==「温床は〜がある」は日本語としてどこかおかしい=「温床には〜がある」が正統日本語なのでないでしょうか
*6:御信者うちうちで盛り上がるだけでよいのなら,それでかまわないかもしれません
*7:被告の雑文が原告支援blogにあるのが不思議ですが,著作権はどうなっているのでしょうか?
*8:『沖縄タイムズ』2007/06/22夕刊 http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706221700_01.html
*9:曽野綾子が明らかにしたのは「軍の命令文書がみつからなかった」ことと「旧軍責任者はどう主張しているか」の2点だけですから,軍命令の有無については否定も肯定もしていないし,できるわけがありません. 多分投稿者は『ある神話の背景』(文藝春秋社単行本,文春文庫,WAC新書)を読んでいない=WAC版の広告かオビぐらいは読んだかも=のではないでしょうか