「少子化の危機」についてのメモ


笙野頼子『なにもしてない』(初出『群像』1993/05; 引用は『三冠小説集』河出文庫 2007/01 p.197)より
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子供不可という表示とともに高騰して行く家賃や大気汚染の恐怖で,ナニカシテイル人さえ子供を持てないでいるらしいではないか. 政府は別に未婚の母用アパートをあちこちに建てるという根性もないらしいし,そこにカウンセラーを置く事も,託児所のない企業から高い税金を取ることも特に考えてはいないらしい. 子供を作りたい男女が作れないでいるというので,作りたくない男女を駆り立て作らせようとする. ついでに不妊の人達を攻撃するかもしれないのだし.


私が二十代の頃,人口増加で地球は潰れる,と威かされた. 先進国の子供は大層な資源を食い潰すのだとも. だが最近では,数年前まで人口増加を憂えていたはずの(記憶違いだろうか)どこかの文化人は,福祉社会に若い人手が必要だなどと,目の玉のでんぐり返りそうな事を喋っていたりする. それでは数年後には多産で国を滅ぼす女どもなどという攻撃が始まるのだろうか.
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good2ndの日記 2007/02/06 より

* 自らが大臣として取り組むべき問題やその歴史的・文化的背景についての理解・認識が,あまりにも浅い

という批判には,徐々に同意できるようになってきました【http://d.hatena.ne.jp/good2nd/20070206/1170741412

「家族・地域の絆再生」政務官会議PT中間とりまとめ 平成18年5月 / 「家族・地域の絆再生」政務官会議PT - あったかハッピープロジェクト - http://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2006/0516seimukan_pt.html *1を読めば,柳沢大臣*2厚生労働大臣の職務に忠実であることがわかるだろう.


「家族・地域の絆再生」政務官会議PT中間とりまとめ 平成18年5月【抜粋 太字強調は引用者】
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はじめに [snip]


Ⅰ.基本的な考え方

○ 今日の深刻な少子化の原因の一つとして,過度に経済的な豊かさを求め,個人を優先する風潮があると考えられる. 家庭生活よりも職業生活を優先させ,個人が自らの自由や気楽さを望むあまり,生命を継承していくことの大切さへの意識が希薄化し,「結婚しない」あるいは「結婚しても子どもを持たない」方が,経済的,時間的な制約に縛られることがより少ないという考え方を背景に,非婚化,晩婚化,少子化が進んでいるという側面は無視し得ないと考えられる.

○ このような状況に対応して,政府としても,経済的な支援,職業と生活との両立支援などを進めてきたが,これらの施策はいわば対処療法ではあっても,むしろ少子化が進んでいく上記のような背景を前提とするものであるため,長期的な観点から抜本的に少子化の流れを変えるものとしては不十分であると考えられる.

○ もとより,結婚や出産については国家や社会が強制できるものではなく,一人ひとりの人間が自ら判断するものであることは当然であるが,また一方で,尊厳に満ちた個人の生命を次代に継承していくことができるのも一人ひとりの人間だけである. それだからこそ,長期的な観点から少子化問題に対応するためには,強制ではなく,経済優先・個人優先の価値観とは異なる新しい価値観に基づき,「結婚して子どもを産み育てることが当たり前と皆が自然に考える社会」を実現することが必要であると考える.

○ その際,子育ては,「家族・家庭」が中心となって営まれるものであることから,先ず何よりも家族の愛情の絆を再生すること,さらに子育て家族が孤立することなく身近な地域における触れ合いとつながりの基盤である町内会等とのかかわりの中で,「楽ではない」けれど「楽しい」子育ての喜びを実感するため,地域の絆を再生することが求められる. さらに,家庭や地域を通じて生命や家族を大切にする意識が高まり,社会全体が妊娠・出産を喜ばしいことと受け止めて,出産や子育てを応援する雰囲気を醸成することが求められる.

○ このような考え方は,少子化に対応するための政府の施策の総合的な指針である『少子化社会対策大綱』(平成16年6月閣議決定)において,「少子化の流れを変えるための3つの視点」の中で「子育ての新たな支え合いと連帯−家族のきずなと地域のきずな−」として取り上げられ,さらに,「少子化の流れを変えるための4つの重点課題」では,この視点に対応した「生命の大切さ,家庭の役割等についての理解」や「子育ての新たな支え合いと連帯」として設定されている.

○ 大綱に基づく具体的な実施計画である『子ども・子育て応援プラン』(平成16年12月少子化社会対策会議決定)においては,上記の視点,重点課題に対応する具体的施策が掲げられているが,本PTでは,その中で取り上げられていなかったもの,あるいは取り上げられていても,「家族・地域の絆再生」という観点からより効果的に進めるべきと考えられるものを中心に『家族と地域の絆再生プラン(仮称)』として提言する.

○ 政府は,これまで,累次にわたる少子化対策を定めてきたが,出生率は依然として下がり続け,いよいよ人口減少社会が現実のものとなってきている. 『少子化社会対策大綱』を定めた2年前と比しても,今やさらなる抜本的な取組が求められていることは言うまでもない. 本PTの提言が,これから出される政府の「少子化社会対策推進会議」の提言とともに,「政府・与党少子化対策協議会」での議論を踏まえ,抜本的な少子化対策として,政府が6月にも取りまとめる骨太の方針に盛り込まれ,さらには,『少子化社会対策大綱』がより充実したものとなるよう見直しが図られることを期待する.

なお,積極的な少子化対策を進めるのみならず,政府の施策全般についても,結果として少子化を助長することにつながっているものはないか,現状を把握した上で必要に応じて見直しを図っていく必要があるものと考える.


II.視点

家族(親と子,祖父母や兄弟,親類等)と家族が暮らす身近な地域(町内会等)の絆や生命を次代に継承していくことの重要性について,国民全体の理解を深め,家族と地域の絆を再生することにより,「結婚して子どもを産み育てることが当たり前と皆が自然に考える社会」の実現を目指す.


III. 『家族と地域の絆再生プラン(仮称)』[snip]
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*1:pick-upの日記 http://d.hatena.ne.jp/pick-up/20070213/1171560646 で紹介された

*2:かの発言には工場経営幹部が"従業員ひとりひとりの努力"を要求する無責任ぶりに似たおかしさがある=「努力」は賃金カットや早期依頼退職またはタダ働き残業であったりする