わかっているがわからない/NHK ETV2001番組改竄経緯クロニクル増補版

駄文 id:s_kotake:20050419

  • 2005/04/19 ■ [etc]そんなことはずいぶん前から分かっていたことだ.


2001年当時からこの問題について発言してこられた≪当事者≫[**1]から明かされる≪新しい≫[**2]≪事実≫はプロパガンダの材料に最適ではある. が, あらためて,今の時期に大騒ぎして喜ぶ理由が,わからん. 翌日には朝日から反論されてしまったようだが, NHKの『催告書』あたりが連動しているのか? 郵政民営化問題・日中関係がらみで自民党内権力闘争が始まったとみるのが,陰謀論的には楽しい[冗談です]. IMPACTiON No.146[**3]が出たからって それほど影響力のある雑誌とも思えない.


[註記**1] ドキュメンタリジャパン(DJ)坂上香ディレクタは第3夜「いまも続く戦時性暴力=現代の紛争下の女性に対する性暴力」担当ディレクタ,第2夜「問われる戦時性暴力=日本軍の戦時性暴力と女性国際戦犯法廷」撮影に関わった.
番組作成の最前線に関わったからといって"有力政治家のNHKへの圧力"の有無を知る≪当事者≫になれるわけもない.
なお,第2夜分制作からDJが降りたのは 2001/01/24 ≪教養番組部長のDJ版2回目試写. 手直し足りず. 編集作業をNHK側で引き取る.≫【2005/01/19 NHK広報局 報道資料2『ETV2001の制作経緯』】.


[註記**2] 2005/01/19 NHK広報局 報道資料2『ETV2001の制作経緯』がすでに認めていた事実 http://www3.nhk.or.jp/pr/keiei/news/006.html


[註記**3] IMPACTiON 146号 特集 NHK番組改変と女性国際戦犯法廷 (インパクト出版会 2005/04/15 定価1200+税) http://www.jca.apc.org/~impact/magazine/impaction.html

インパクション (146)


≪番組の改変作業自体は, 朝日新聞が安倍, 中川両氏の政治的圧力があったとする日時の, ずっと以前から始まっている. 担当の部長が編集試写を見て, 「取材対象との距離が近すぎる」と改変を指示したという. 昭和天皇を「強姦などの罪で有罪」とするような「法廷」の内容をそのまま番組にしたのでは, 上司が改変を指示するのは, 当たり前だろう.≫ (2005/01/23 讀賣新聞社説) "NHKの編集権"の範囲とわりきって"政治家によるNHKへの圧力","政府広報担当と化してしまった「みなさまの」NHK"の問題を曖昧化する方向はすでに,NHK社内「調査」を受けて,1月23日に讀賣新聞が主張していたことだ.



NHK放送総局長代行 出田幸彦『催告書』2005/04/20

一連の朝日新聞報道問題に関連して, NHKでは, 朝日新聞に対し, 平成17年1月21日付の公開質問状への回答, および平成17年1月12日付朝日新聞記事の訂正と謝罪を再度求めるため, 下記のとおり4月20日付で催告書を送付しました.

平成17年4月20日

株式会社朝日新聞社

日本放送協会 放送総局長代行 出田幸彦  


催告書

前略

朝日新聞社広報宣伝本部長名による平成17年2月17日付「公開質問状に対する回答書」および御社代理人弁護士からの平成17年2月17日付「再申し入れ書」に関し, 日本放送協会は, 次のとおり催告いたします.


御社は, NHKに対し, 「公開質問状に対する回答書」をご送付なさいましたが, 同書面は, NHKの平成17年1月21日付「公開質問状」に記載された質問に対する回答となっておらず, 事実上回答を拒否するものであると認識しております. 理由は以下のとおりです.

平成17年1月12日付朝日新聞記事は, 「中川昭・安倍氏『内容偏り』」「前日, 幹部呼び指摘」と題して, 「01年1月, 旧日本軍慰安婦制度の責任者を裁く民衆法廷をあつかったNHKの特集番組で, 中川昭一・現経産相, 安倍晋三・現自民党幹事長代理が放送前日にNHK幹部を呼んで『偏った内容だ』などと指摘していたことが分かった」(1面リード部分1行目以下)と断定的に述べた上で, 「いずれにしても結果的に, 憲法が禁じる検閲に近い事態が起きていたことになり, 憲法で保障された表現, 報道の自由を無視したものといえる」(34面4段左から2行目以下)と結論付けています.

NHKの公開質問状の前半は, 「記事の真偽について」と題して, 御社に対してこの「中川昭一・現経産相, 安倍晋三・現自民党幹事長代理が放送前日にNHK幹部を呼んで『偏った内容だ』などと指摘していた」などと断定する記事の内容が真実なのか否かについて, 「(1)中川氏とNHK幹部が放送前日に面会したのは事実ですか」「(3)中川氏が放送中止を求めたのは事実ですか」「(5)安倍氏NHK幹部を呼び出したのは事実ですか」のように, 記事が摘示する主要な具体的事実を示しながら, その真偽を問うています. つまり公開質問状の前半は, 御社に対して記事の「真実性」を正面から問うているものです. この点に関して御社からの「公開質問状に対する回答書」では, 「1月12日付および1月18日付の弊社記事は, 当事者, 周辺関係者に対する取材を総合して執筆・掲載したもので, いずれも記事中に示しておりますように具体的な取材に基づいた根拠のあるものです」(2頁10行目以下)などと述べるのみで, 記事の内容が真実であったのか否かについては一切回答をされておりません.

公開質問状の後半は, 「御社記者の取材について」と題して, 御社記者が, 松尾元総局長に対する取材において取材倫理を遵守されたのかという点について問うています. この点に関して御社からの「公開質問状に対する回答書」では, 取材時に無断で録音を行ったのではないかとの質問に対し, 「取材の手法, 経緯, 内容などについては, 一般的に取材相手との信頼関係を保ち, 将来における取材の自由を確保する観点から, これまでも原則として明らかにしておりません」(3頁1行目)と述べて, 明確に回答を拒否されています. また, 御社記者が1月12日付朝日新聞記事の掲載以降になって, 松尾元総局長に対して, 「NHKにはもう話してしまいましたか」「どこかでひそかに会えませんか」「証言の内容について腹を割って調整しませんか」「摺り合わせができるでしょうから」などと述べた理由については, 事実関係を認めた上で, 「あくまでも取材源を尊重し, 保護したいという考えに基づいたものでした」(4頁6行目以下), と回答されておりますが, 記事の掲載後に取材内容について「摺り合わせる」ことがどうして取材源の保護につながるのか不明であり, やはり回答になっていないものと考えます.


このように, 御社はNHKの公開質問状に対する回答を一切拒否しているものと受け取らざるを得ません.


また, 御社代理人弁護士からの平成17年2月17日付「再申し入れ書」においては, NHKが1月20日に行った「朝日新聞虚偽報道問題」と題する報道について, 「虚偽の事実を摘示し当社の名誉・信用を著しく毀損する違法なものであり, 極めて遺憾です」(2頁4行目以下)と述べておられますが, その一方で, 上述のとおり, 「公開質問状」の「御社の記事は真実なのか否か」という問いに対しては「公開質問状に対する回答書」の中で明確な回答を避けており, 御社として記事の内容が真実と考えているのか, 真実でないと考えているのか分からず, 理解に苦しみます.

更に, 「再申し入れ書」は, 1月12日付朝日新聞記事が報じた内容について, 「1月12日付の朝日新聞朝刊記事は, 番組が偏ったものだとする政治家が, 放送前にNHK幹部に対し『公平で客観的な番組にするように』などと番組内容について意見を表明し, その直後に番組の改変がなされたことを伝え, その問題点を指摘したものです」(2頁最終行以下)と要約していますが, これに対して実際の朝日新聞記事では, 「中川昭一・現経産相, 安倍晋三・現自民党幹事長代理が放送前日にNHK幹部を呼んで『偏った内容だ』などと指摘していた」(1面リード部分1行目以下)と冒頭で明確に記載されています. 御社代理人弁護士の示す記事の要約は, 「中川昭一・現経産相, 安倍晋三・現自民党幹事長代理」という行為主体に関する事実や, 当該行為主体が番組の内容を事前に知っていたという事実, 当該行為主体がNHK幹部を呼び出したという事実など, 1月12日付朝日新聞記事に含まれる重要な事実が含まれておらず, 記事の主要な伝達事実を意図的に抽象化しようとするものと考えるほかありません.


NHK広報局は, こうした朝日新聞社広報宣伝本部長名による平成17年2月17日付「公開質問状に対する回答書」および御社代理人弁護士からの平成17年2月17日付「再申し入れ書」を受けて, 同日付にて「朝日新聞報道問題について」と題する報道資料を作成して配布し, 引き続き御社に対して記事の訂正と謝罪を求めていくつもりである旨を, 御社を含めマスコミ各社にお伝えすることで公表いたしました. このように, NHKと致しましては, あくまで御社からは公開質問状に対する回答をいただいておらず, 引き続き回答を求めるという姿勢であり, かつ, その姿勢は公知の事実であると認識しております.

これに対して御社は, 4月8日付の朝日新聞朝刊において, 「この質問状について, 朝日新聞社は2月17日付で回答したうえで, NHKの記者会見や報道内容が本社の名誉を傷つけるものとして名誉回復措置を求めているが, NHKからの回答はない」(34面5段5行目以下)とし, あたかも御社がNHKからの質問に回答したかのように報じています. しかしながら, 上述のとおり, 御社は「回答書」と題する書面をNHKに送ったのみで, 実際にはNHKからの質問には全く答えておらず, 4月8日付の記事自体が事実に反すると言わざるを得ません.

ここに, 公開質問状への回答および御社記事の訂正と謝罪を再度催告するとともに, NHKは御社からの回答を待っている立場にあるという事実を, 正確に報じていただくよう強く要望いたします.

この恥ずかしい文書を≪みなさまのNHK≫7時のニュースは大々的に報道したのだろうか.残念ながらTV持っていないあたしにはわからない.



= 関連url =

朝日新聞NHK問題特集 http://www.asahi.com/special/nhk/

NHK HP http://www.nhk.or.jp/朝日新聞報道問題 http://www3.nhk.or.jp/pr/keiei/news/

はてなキーワード 女性国際戦犯法廷 http://d.hatena.ne.jp/keyword/%8F%97%90%AB%8D%91%8D%DB%90%ED%94%C6%96@%92%EC

(再掲) NHK/ETV2001番組改竄経緯[*1]クロニクル(増補版) -- 再掲にあたり隔月刊誌『IMPACTiON』No.146 pp.8 NHK番組改変と政治介入「戦争をどう裁くか」関係者(坂上香,西野留美子,内海愛子,鵜飼哲,板垣竜太)座談会からの引用を追加 =追加箇所を赤字で記す= しました[*2]. 番組≪内容≫の改竄過程については同書p.40-43 メキキネット作成 NHK・ETV番組改変問題素材集を参照下さい. 旧版は http://d.hatena.ne.jp/dempax/20050127#p5


--再掲ここから

報道資料 は すでに id:dempax:20050121#p3でも引用しているので, 川崎泰資/柴田鉄治『検証 日本の組織ジャーナリズム NHK朝日新聞』p.62-p.83「なぜ番組を改竄したのか」の記述を補っておきます[補足箇所は文字色を変更, 番組の内容の変更詳細は同書を参照されたい]

平成12年

  • 10月半ば DJがEP21に提出した二夜分の企画が採用された.(坂上ディレクタの 記憶) 「法廷」部分担当 DJ甲斐ディレクタ, 「公聴会」部分 DJ坂上ディレクタ(p.65)
  • 11月16日 NHK内でスタッフの顔合わせと構成会議, DJ側から「天皇」の戦争責任の扱いをNHK側に質した.(p.65) DJのプロデューサーが「天皇に有罪という判決が下ったときに,そういうのは出せるんですよね,どうなんですか」ということを投げ掛けたら,教養部の永田さんと編成局の桜井さんという方が二人で,それぞれ,「それはもちろんです」というような対応をされた[snip]自分たちも今まで戦争責任が問われるような番組を作ってきた,それは表現の方法によるんですよ,だから,判決が出たらそれはそのまま出すものだ,それは当たり前のことだ,というようなことをお二人とも自信を持って語っていました.それに疑いを持つような感じではなかったですね (『IMPACTiON』No.146,p.11 坂上, "教養部の永田さん":永田浩三NHKチーフプロデューサ)
  • 11月21日 シリーズの企画提案が番組制作局部長会で承認. 制作を委託.
  • 12月20日 構成会議. 永田CP,長井デスクから「右翼がNHKのニュースで女性国際戦犯法廷を扱ったことにクレームをつけてきた」の報告 (p.66-67)
  • 12月中旬「ニュース7」で, 女性国際戦犯法廷を放送, 右翼がNHKに抗議. 教養部担当者永田CP自宅へ右翼の嫌がらせ(p.68).


平成13年

  • 1月19日 教養番組部長のDJ版1回目試写. 大幅な手直しを, DJに指示. 吉岡民夫教養部長(p.68) 「法廷との距離が近すぎる」「企画とは違う」など言い募ったあと, 具体的な改善は検討しないまま席を立つ, 部長の意向を忖度し編集方針変更(p.69)
  • 1月24日 教養番組部長のDJ版2回目試写. 加害兵士の発言削除, DJ排除, 教養部とEP21のみで話をすすめる(p.69) 手直し足りず. 編集作業をNHK側で引き取る.
  • 1月26日 総局長粗編試写, 協議. 「女性法廷」に批判的な意見もインタビューして入れることを決定.
  • 1月28日 NHK放送センタに右翼約20人推し掛け, 吉岡部長あてに放送中止を求める要望書を手渡す(p.71)
  • 1月28日 午後, 追加インタビュー[*4]取材. 夜, DJ抜きで上層部局内試写会(p.71)
  • 1月29日 未明にNHK第1次版編集VTRが出来る. (44分)(総局長と総合企画室担当局長らが安倍氏と面会.)夕方NHK第1次版の総局長初試写. 試写後, 協議. 深夜, 再度試写. 43分になる.
  • 1月30日 総局長, 番制局長, 教養部長で協議. さらに編集して40分にする. 夜, 放送.


【出典: 2005/01/19 NHK広報局 報道資料 ETV2001の制作経緯 放送 教育テレビ 平成13年1月30日 「シリーズ戦争をどう裁くか 第2回 問われる戦時性暴力」 http://www.nhk.or.jp/pr/keiei/news/006.html 2005/04/21追記 太字強調は引用者による


朝日新聞が安倍, 中川両氏の政治的圧力があったとする日時
  ↓
1月29日 総局長と総合企画室担当局長らが安倍氏と面会(NHK報道資料)



番組の改変作業自体は, …… ずっと以前から始まっている
  ↓
番組改竄作業の経過を再度確認.

-- 再掲ここまで

最後の数行は 2005/01/23 讀賣新聞社説に関わる.

[……] 事実関係の解明に際し, 問題の焦点を拡散させてはならない. ことの本質は, 発端となった朝日新聞の一月十二日の報道内容が「事実」かどうかである.

当時の安倍官房副長官の方からNHKを呼んだのか, あるいは, 中川現経済産業相が当時, 番組放送前にNHKに圧力をかけたのか. 仮に「圧力」があったとしても, それによって番組内容が変わったのか……などの, 最初に報道された内容の真偽である.

事実関係の確定を抜きに, 一般論としてNHKと政治家の「距離」が, ことの本質だ, とする論調もあるが, 論理のすり替え・争点ずらしのように見える.

NHKによると, 番組の改変作業自体は, 朝日新聞が安倍, 中川両氏の政治的圧力があったとする日時の, ずっと以前から始まっている.

担当の部長が編集試写を見て, 「取材対象との距離が近すぎる」と改変を指示したという. 昭和天皇を「強姦などの罪で有罪」とするような「法廷」の内容をそのまま番組にしたのでは, 上司が改変を指示するのは, 当たり前だろう. [……]【2005/01/23 讀賣新聞社説】



 

*1:改竄問題とすると2005年/以降?まで続いて 手に負えなくなる

*2:他にも追加したいところはあるのだが今日は疲れたので1箇所だけで先送り. おやすみなさい. ≪眠れ良い子たち≫ C by 安田南

*3:維新政党・新風, 大日本愛国党など http://www.jca.apc.org/~itagaki/nhk/shukin353.htm 國民新聞 平成13年3月25日号 NHK特番 糾弾される http://www5f.biglobe.ne.jp/~kokumin-shinbun/H13/1303/130312nhk.html

*4:秦郁彦氏のコメントを 自宅収録 http://www.jca.apc.org/~itagaki/nhk/shukin353.htm