A-Musik e ku iroju

1 不屈の民 竹田賢一(大正琴), 小山哲人(bass), 石渡明廣(guitar), 久下恵(ドラムス), 時岡秀雄(alto saxophone), 工藤冬里(piano)
2a 連帯性のうた 竹田賢一(flute), 小山哲人(bass), 石渡明廣(guitar), 久下恵生(drums), 篠田昌巳(alto saxophone), 高橋鮎生(vocal)
2b 統一戦線のうた 竹田賢一(flute), 小山哲人(bass), 石渡明廣(guitar), 久下恵生(drums), 篠田昌巳, 時岡秀雄, オニオン釜ケ崎(alto & tenor saxophone)
2c プリパ 竹田賢一(大正琴), 小山哲人(bass), 石渡明廣(guitar), 久下恵生(drums), 千野秀一Moog liberation synthesizer), 篠田昌巳, 時岡秀雄, オニオン釜ケ崎(alto & tenor saxophone)
3 Uber den Selbstmord (On Suicide) 竹田賢一(大正琴), 小山哲人(bass), 石渡明廣(drums), 久下恵生(drums), 時岡秀雄(alto saxophone), 工藤冬里(piano, synthesizer), 高橋文子(vocal)
4 There will never be another you 竹田賢一(flute), 小山哲人(bass), 石渡明廣(guitar), 久下恵生(drums), 時岡秀雄(alto saxophone), 工藤冬里(piano, synthesizer), 三浦燎子(vocal)
5 I dance 竹田賢一(大正琴), 小山哲人(bass), 石渡明廣(guitar), 久下恵生(drums), 時岡秀雄(alto saxophone), 工藤冬里(organ), 坂本龍一(piano)
6 反日ラップ 竹田賢一(vocal), 小山哲人(bass), 石渡明廣(guitar), 久下恵生(drums), 千野秀一Moog liberation synthesizer), 篠田昌巳, 時岡秀雄, オニオン釜ケ崎(alto & tenor saxophone), 河野優彦(trombone), Rorie, 勝田由美, 大熊亘, 中村峰子, 田正彦(back-up voices)
7 El Vito 竹田賢一(大正琴), 小山哲人(bass), 石渡明廣(guitar), 久下恵生(drums), 工藤冬里(piano), 時岡秀雄(alto saxophone), Rorie(vocal)
8 ぬかるみの兵士たち 竹田賢一(vocal, 大正琴), 小山哲人(bass), 石渡明廣(guitar), 久下恵生(drums), 工藤冬里(piano, organ), John Duncan (whispering)
9 Nilririya 竹田賢一(harmonium), 篠田昌巳(sopranino & tenor saxopone), 佐藤春樹(trombone), 山本譲(cello)箕輪攻機(tabla), カムラ(vocal)

[ …… ] A-Musikは革命の挨拶を送る.


音楽は, まず第一に自分が楽しむためのものだし, 人を楽しませるものだ(楽しみ方は人さまざま. ハッピーに踊り呆けることだけが楽しい, なんて貧しさの極みだ).

ドイツ語で E-Musik エー・ムジークといえば, 直訳して“純音楽”, “まじめ音楽”, クラシックや現代音楽など, 美的完成度やアイディアの優秀さを鑑賞する音楽だ. 多くはアカデミズムや権威主義と結びつき, 聞く者は“美”の鋳型の中で受動的な立場を取らされる. 一方, U-Musik ウー・ムジークとは, “大衆音楽”, 一見楽しさを追求する音楽のように思われるけれど, ここであてがわれるのは“楽しみ方の鋳型”. 消費生活と消費の元本を獲得するための労働という循環を疑問なく受け入れさせるための一時の享楽.

音楽はなぜ楽しいのか. それは音楽が“気分”をコントロールするものだからだ. そして気分とは, 心と体が文化する以前の統合されたトポス, 人間の行動, 活動を無意識的に司るもの. A-Musikはなによりも, この“気分”に刺激を与えたい.

また, “気分”は個人的なものでありながら同時に“時代の気分”でもある. そして今, ぼくたちが向い合っている時代の気分は, 無関心と無気力, わずかに与えられた逸楽に縛られて, 目の前で行われている虐殺も強姦もただ見つめていることしかできない不能の予感. ぼくたちはその気分を変えたい.


だから, A-Musikは, 鋳型にはめられない. あてがいぶちではない楽しみ方を求める. そして, 革命のル・サンチマン, 身を斬られるまでの痛みの快感, 抑圧に抗する人々の昂揚した意志が込められたレパートリーを再発見する.

芸術のためのシリアス・ミュージックでも, 商品のためのポップスでもないポピュラー・ミュージックは, 権力や貨幣にゴマをする宴会の座興ではない. それは変革の予兆を育む楽しみだ.


A-Musikは革命の余興を送る.


A-Musikはバンドでありながらバンドではない. A-Musikのライヴ・アクトは, その機会ごとにさまざまなゲストが加わることで, はじめて成立する. このアルバム「エクイロジュ」で各曲ごとに多くの異なるミュージシャンが参加しているのは, A-Musikの活動スタイルの凝縮したモデルなのだ.

ジャズ・ミュージシャン, ロック・ミュージシャン, 現代音楽のプレイヤー, ……ゲストたちの普段演奏している音楽のジャンルはいろいろだし, 技術的レヴェルもまちまちだ. 専門家集団でもないし, 素人集団でもない.

A-Musikは, ミュージシャンのジャンルやスタイルを越えて, “革命への気分”へ向けて協働するための, 基本ユニットとして存在している.

そしてぼくたちは, 無産者にとっての最大の武器は団結である, という古典的な真理に立ち戻る. A-Musikには万能で突出した名人は必要ない. 同時に, 数量に還元されるマスとしての集団的力にも依拠しない. 一人一人の持っている個性が, さまざまな組み合わせを取るとき, サウンドは自ら豊かなヴァラエティーを持ってくる.

しかし, A-Musikは見事な演奏を聞かせたいわけでも, カッコよさを見せたいわけでも, 左翼ブランドの変わった装飾品を提供したいわけでもない. 音楽によって精神が鼓舞され, 日常の疲れを吹き飛ばし, 視野が開かれ, 共感する能力を回復するという, 本来的な体験を, 演奏を共にしたミュージシャンたち, フィードバックの回路に参入したリスナーたちと共有したいだけだ.

A-Musikの「エクイロジュ」は, ただレコード棚に並べられ, ターン・テーブルに置かれるだけで終わってほしくない. これらの曲が応援歌となり, 軍歌となり, 道具となって使いこなされる運動や生き方を, 聞いた一人一人が発見するきっかけとなってくれれば幸いだ. そしてさらに, 自らの武器としての音楽をつくり出し, このA-Musikは多数のA-Musikのうちのただ一つにすぎなくなる日を待ち望んでいる.


A-Musikは革命の武器を送る. [ …… ]【音楽に冠たる一切から抜粋転載】

このレコードを権利者の許諾なく, テープその他に録音・複製し, あるいは演奏することは, われわれの歓迎するところです.