疑似科学つながりで

  • id:macaca:20041209 間違ったアナロジーについて / 12月10日追記


ついでに

■ no.93 ジャンプ出身愛国者バトル(04.10.11) http://home.interlink.or.jp/~an-an/e/93.html

[…… 前半省略 後半を引用 ……]

そんなわけで, 本宮ひろ志問題とは, 右翼が右翼を叱る運動 -

このヤロー. 仲間だと思ってたのに, 裏切りやがって! 神聖なる皇軍のことを悪くかきやがって!石坂啓がやるならともかく, お前がやるのは許せん!

という同志への失望の表明なのである.


しかしながら, 例えば探偵ファイルにおいても http://www.tanteifile.com/diary/2004/10/02_01/index.html というように「つくる会」よりの検証がなされ, また, それが悪徳商法マニアックス内の掲示板でも

  • [22275]本宮ひろし by.ばるんが 2004年10月03日(日) 14時38分 ■ は, 自衛隊出身だそうです. だからなんだと言われても・・. まあ, 既に老害とは言われていましたが.
  • [22274]バカだわな. by.「え」 2004年10月03日(日) 14時01分 ■ >ヤングジャンプを見たけど, やっぱりこういうことになってきましたな. > http://www.tanteifile.com/diary/index4.html 本宮ひろしって, 確かアシスタントに丸投げだと思ってたけど, ここまでバカだとは思わなかったなぁ. 参考:[22273]


掲示板とはいえ, 誰も意義をはさむものがいない. 悪党商法マニアックスも右よりだったのか?この辺の人たちまでが小林側に立ってるのは意外である. 「つくる会」の影響力はもはや「右側」をはみ出し始めているのだろうか?


ではその「つくる会」ってどんな会か?というとこんな感じ http://www.jiyuu-shikan.org/

  • 日本は北朝鮮, 韓国に謝罪する必要などなくむしろ植民地支配は良心的なものだったので感謝して欲しい.
  • 東南アジアでも日本は良心的に振る舞い, 各国が独立できたのは日本のおかげ.
  • 尊皇精神は江戸時代よりずっと以前から庶民感情の仲に一貫して息づいていた.


等ビックリ仰天な主張の数々である.


まあ, 私は歴史学者ではないのでこれに反論する術をもってないが, とりあえず最後のは絶対に間違いだと思う. 渋谷のギャルが日本の総理大臣の名前を訊かれても答えられない以上に無知蒙昧なかつての農民は天皇の存在すら知らないで生きた筈. どうして分かるのか?俺の中に流れる下層貧民の血(ムラからクニへの時代から一貫して下層貧民)がそう訴えるのだ. まあそれ以前に「もっと祖国に誇りを」みたいなメッセージがことあるごとに挿入され, 文の端々からも匂うので史料の解釈の正当性を考察する気にもならない. ではこの「つくる会」の主張に対抗すべく, 別な角度で考察してみよう. 「虐殺はなかった」といえば, 「ガス室はなかった」というマルコポーロ事件であるが, これをもう少し調べてみる. この主張をしているのは, 西岡昌紀, 木村愛二 http://www.jca.apc.org/~altmedka/ と言った人たち. といっても日本オリジナルの主張ではない. 元ネタをたどると, ロベール・フォリソン, ラシニエといった人物, カルフォルニアの「Institute for Historical Reviw 歴史評論研究所」, 「リバティ・ロビー」, フランスのポール・フォール派, リバティ・ロビーなどといった人種主義団体, 極右組織, ネオナチ団体の主張が原典であることが分かる. この辺は「ロックフェラー財閥といったユダヤ系資本が裏で世界を動かしている」といった陰謀論ともつながっており, 矢追純一飛鳥昭雄, 宇野正美, 太田龍などのUFO本の元ネタとも人脈的に近い. トンデモ本といえども電波を浴びた(発病した)人が突発的にオリジナルの妄想を紡ぎ出すわけではなく, 背後にイデオロギー的系譜があるようだ.


さて, こうしてみると, 「南京虐殺なかった派」というのは, 「アウシュビッツなかった派」を模倣したものと思えてくる. ジャパン右翼が欧米右翼の手法を模倣したのだ. 本当の右翼なら

南京虐殺は正しかった. シナ人の虫けらなど殺されて当然. またやりたい」

ぐらい言って欲しいものだ. っていうか, 本音としてはそのくらいの意識を本当に持ってそうだが, そんなことを今時いいだそうものなら, ますます市民の反感を買い, 活動が先細っていく危機感から

皇軍は占領地でも紳士的にふるまった. 教科書に書かれている残酷な行為などねつ造だ」

との主張に切り替えたと言うことだろう. と学会の山本弘などが, わざわざトンデモ本としては笑える度が低い小林よしのりの著書をとりあげ, ツッコミを入れまくるのもUFO系トンデモ本の思想的系譜とつくる会に共通 の匂いを感じ取ってのことであろう.


こんな風に書くと「お前はサヨクなのか?」と逆に言われそうだが, 私有財産制を廃したら完全平等のバラ色の未来が来るなんて到底実感できない. つくる作品とか階級闘争って感じでプロレタリアの味方に見られそうだけど, プロレタリア独裁なんてありえないでしょ. 救われないことを前提で階級の問題を扱っている. だからのでどちらかといえば保守派なんだと思う. ただ, 愛国心ゼロなだけ. だいたい愛国心って何?国なんか愛してどうするの?まあ海外旅行とか興味ないし, 一生日本で暮らしていくだろうから, それって日本が好きってことなのかも知れないけど, 別に愛はないね. 誇りもない. ただし, 明日から中国語が強制されたら辛いだろうなとは思う. そのくらいが普通 の庶民の感覚だと思う.

そんな庶民の一般的な感覚に基づいて, 「もっと愛国心を育む教育を」という意図で「あたらしい教科書」を生み出した「つくる会」を気持ち悪いと思い, あまり好きではない本宮ひろ志だが, 今回に限っては応援する. いいぞ. もっとやれ!


引用者付記:≪UFO本の元ネタ≫「ナチスおたくのおっさん」(山本弘) [*1] については 以下を参照されたい.


ユダヤ陰謀説の正体 (ちくま新書 (223)) なぜ人はニセ科学を信じるのか―UFO、カルト、心霊、超能力のウソ アウシュヴィッツと「アウシュヴィッツの嘘」

*1:松浦寛『ユダヤ陰謀説の正体』p.147