〈解説〉平和行進の心ふみにじる「団体旗自粛」/ 露骨な'分裂と排除の論理'おしつけ

今月18日にスタートした原水爆禁止1984年世界大会準備委員会主催の'84平和大行進(東京広島コース)で統一労組懇などの団体旗を'自粛'の名のもとに不当に制限しようとする異常な事態がつづいています. このなかで,総評が,原水協や統一労組懇などを平和行進からしめだそうとして,各単産委員長,県評議長宛てに5月21日付けで「指示文書」をだしていたことまで明らかになってきました



団体旗の自由は平和行進の伝統


平和行進の団体旗問題をめぐっては,28日に開かれた世界大会準備委員会の第三回運営委員会でも論議になり,新婦人,婦団連,全商連などから,団体旗をかかげるのは自由であるとして,団体旗や政党旗の自由を拘束するような口頭了解と行進実施要綱内の「平和行進のすすめ方」の関連項目の破棄,撤回を求める意見が相次いで出されました


また原水協に対しても,これまで長年にわたって平和行進に熱心にとりくんできた原水協加盟団体などが相次いで,団体旗の自由を守る立場にしっかり立つよう,要請をつづけています


平和行進に参加する団体が,それぞれの旗をかかげることが,なぜ問題になるのでしょうか


そもそも平和行進は,日本原水協や加盟団体が27年間にわたってつづけ発展させてきたものです. その間,団体旗の制限など一度も問題にならず,各団体は自分たちの団体旗を高々とかかげて全国を網の目のように行進し,核兵器全面禁止,被爆者援護を訴えつづけてきました. ところが,東京-広島-長崎コースだけを原水禁世界大会準備委員会がはじめて主催した昨年,総評などが平和行進への統一労組懇の参加に反対し,大阪府下の行進で,大阪総評らが統一労組懇の旗をかかげることにまで反対しました. それが'団体旗の自粛'の名で,ことしふたたびもちだされてきたのです



'準備委決定'捏造した総評「指示文書」


繰り返された団体旗問題の背後になにがあるのか. 総評の「指示文書」がその問いに答えてくれます. 同文書は総評指導部の'分裂と排除の論理'に立つ路線に全体を従わせ平和行進を乗っ取ろうとしていることをあからさまに語っています


「指示文書」では,平和行進の出発に際して,団体旗をかかげた原水協グループについて,世界大会準備委員会が「準備委員会とは別団体として一定距離をおくことを通告し」たとし,さらに「準備委員会は緊急に月日作業部会を開催し協議を行い,原水協の代表が参加した上で」「(原水協グループ)は別団体として準備委員会とは区別し,一定の距離を開けて整理する」ことを満場一致で確認したとのべています. さらに同文書は「原水協が準備委員会の決定を無視し,団体旗をかかげるかぎり,原水協グループは準備委員会の平和行進とは別のものとして位置づけ毅然たる態度にでる」ことなどを指示しています


つまり,この文書は,平和行進から統一労組懇や原水協関係団体のしめだしを露骨に指示したものなのです. まさに'ひさしを借りて,母屋を乗っ取る'とはこのことです


しかも,総評の「指示文書」は,世界大会準備委員会の'決定'まででっちあげていることが,28日の運営委員会の公開の席上で明らかになりました. '原水協グループは別団体として準備委員会とは区別し,一定の距離を開けて整理する'などという,5月19日の作業部会での'満場一致決定'などというものは,まったくの捏造だったのです


そもそも世界大会準備委員会の作業部会は,そうした問題を決定できるところではありません. 作業部会は運営委員会に提案するだけなのです. そして「指示文書」の内容は,28日の運営委員会に提案もされませんでした. それどころか,運営委員会では,作業部会に参加した原水協や市民団体代表が,そうした事実がなかったと言明しています. 総評代表はこれに一言の反論もできなかったのです


また,'平和行進の出発に際して,原水協などを別団体扱いした'などということも,なんら世界大会準備委員会でも決められていないし,そういう事実もなかったのです



運動の重大な変質許さぬために


社会党一党支持」という特定政党支持を組合員に強制している準政党ともいうべき総評は,安保自衛隊を容認した「社公合意」を支持,推進し,社会党とともに右転落しています. 総評は'日本列島不沈空母化'をめざし際限のない軍拡と福祉・教育切り捨てをすすめる中曽根内閣に対し,軍事費削減すら主張しなくなっています. この立場から,安保条約破棄,核兵器全面禁止の運動の先頭にたち,労働戦線の右翼的再編に反対して真の労働戦線統一のため奮闘する統一労組懇の排除をねらい,団体旗の制限をもちだし,平和行進を総評のヘゲモニーのもとにおこうとしているのです


これらの事実は,原水禁運動の国民的組織統一をめざした77年「合意」を裏切り,分裂に固執する「原水禁」・総評との無原則的な共同行動のいきつく先は,結局は,かれらの許容する範囲内に運動をおさえることになり「'日米安保条約を容認する反核運動'への重大な変質」(5月20日付『赤旗』論文「原水爆禁止運動の根本問題 - いまなぜ歴史的解明が必要か」)となるものです


総評の'分裂と排除の論理'のおしつけを許さず,団体旗をかかげる自由を守ることは,原水禁運動と平和行進の伝統を守るうえで一歩もゆずれないものとなっています


(I)



1984/05/29 【資料】'84平和大行進での総評「指示文書」(1984/05/21) id:dempax:19840529 ←