1. まえおき


speaker:


「…(言葉なく, ひびき)…」


narator:


何ノ歌ダ? 誰の声ダ?


speaker:


「目には目を, 歯には歯を, ではない. ただしかし, 忘れられない, 忘れることはありえない」


narator:


何ヲ何ヲ忘レナイノダ?


speaker:


「きみたちがしたことを. どうして忘れられようか, きみたちの父が, きみたちの伯父がしたことを」


narator:


何ヲシタノダ? 何ガ起コッテイタノダ?


speaker:


「きくがいい, チャンや, ワンや, リューの身の上に起ったことを


35年前のことだ


すでに許した. 許しはした


だが忘れてしまったと, 思ってくれては困る. こまる. 忘れることなどありえないのだ」


narator:


何ガ, イッタイ何ガ, 起ッテイタノダ?


35年前ダッテ?



[*1]

*1:平仮名の語りを日本人話者, 片仮名の語りを日本語を母語としない話者に対応させるのが普通だが…ここでは逆転している点に注目する