『赤旗』1968/09/28 6-1 故広津和郎氏の絶筆『宮本百合子選集』への推薦文

このほど『宮本百合子選集』(全巻,新日本出版社)が刊行されることになり,その第一回配本が28日に発売されますが広津和郎氏が,この選集の推薦文として執筆された「清潔な作家」が,さる21日に死去された同氏の絶筆となりました. 遺族の方の了承を得て,ここにその全文を紹介します

清潔な作家


18歳の宮本百合子が大作『貧しき人々の群』を書いて大正文壇を驚倒させたのは今でも有名な話である. その後大正から昭和にかけての日本社会の変動期に,彼女がどういう役割を演じ,どういう活躍をしたかについては,他に説く人があるであろう. それよりも私は彼女が長い作家生活で一貫してわれわれに示して来たその清潔さを挙げたい. その稀に見る清潔さ故に私は作家宮本百合子に敬愛の念を持っている