下書


2年ほど前には町のアパートに墜ちて昼寝していた夫婦二人が即死した. この夏には農家に墜ちて納屋が全焼した. 9月には民家の路地へ飛び込んで年寄が腰を抜かした. ある家では無人機怖さに一家そろって隣町へ引っ越した…等町民の話を聞けばきりがない


ところで陸上補償であるが道路改修と学校の防音装置, それから無人機による直接被害の他はいまだに手がつけられていない. 免税運動はこうした事情から起こった. 税を納めたくても安心して働かせてくれないではないかというのだ. 最近調達庁は陸上補償に関心を寄せているが決め手となる法律がないため難航が予想されている



豊海町にはこの他売春婦とヒロポンという大きな問題がある. 売春婦の数は最近2,30人に減少したがこれは現在キャンプの兵隊が少ないためで, 兵隊が集まればまたごっそりやって来る. 多いときには250人に上がったという. 彼女たちが町の風紀や教育に与える悪影響は測り知れない. 子弟を持つ親や教師はともかくとして野良に出る百姓さんまでも女たちがビール瓶やヒロポンのかけらを辺り構わず捨てるので「足袋・長靴を履かなければ怖くて田圃に入れない」とこぼしていた


県の一部には「いままで漁村としてしか知られなかった町がキャンプのおかげで補償金をもらい, 商売が儲かる. 米軍が引揚げるといったらひきとめるものも少なくないのではないか」と見る者もいる. しかしほとんどの住民は「補償金も要らない. 町の名が知られなくてもいい. 昔通り波の音だけを聞きながらのんびり暮せればそれで十分なのだ」というのである



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