朝日新聞【1954/10/21(8面)千葉版「灯台」】 忠霊搭委員会から


大原町忠霊搭建設委員会[*1]


大原町の忠霊搭建設及びこの資金寄付割当に疑義ありとの本欄への投書についてお答えします


国に靖国神社があり, 県及び各市町村にもぞくぞく忠霊搭が建設されつつあります. また戦時中私達に代りお働き下され, 歓呼して多数の青年を戦場に送り出したわれわれが今, 静かにこれ等多数の殉国の英霊及び遺族の方達の心情に思いをいたすとき今日まで9カ年間何も為し得なかったことを深く恥じる次第です


遺族に補助を与えたらという御意見でありましたが, 遺族の大部分の人達は補助金よりも慰霊と殉国精神の顕彰を熱望しているのではないでしょうか. 遺族会からも昨年末忠霊搭建設の切な要望がありましたので, 当大原町でも各区代表その他有志が集り, 大原町忠霊搭建設委員会を結成し, 建設企画を作り一般町民へ主旨徹底を極力図り御賛同を求めたのですが, あなたの所への御了解を欠いたことは誠に遺憾です. 建設場所については, 買収すべき土地を最小限に止めたいので, 結局中学校南隣の地を選定し, 様式は遺族からの希望を聞きましたが, その規模は他町村のものと比較しても決して法外なものではありません


各区の寄付金目標額の決定には, 各区間の均衡をとるため各区の町民税や均等割を参考にしましたが区内の個人目標は各区の従来の慣習もあり, それぞれ適当に操作することに決め, 現在どの区でもそのように実施しています. もちろんこれは町民税ではありません. 寄付はあくまで寄付で絶対に強制するものではありません. 中には千円,二千円の家庭もありましょうが, これを一時に納入するのではなく, 10ヶ月の分納ですから月百円か二百円となります


町民全体から見ると, 月額20円ないし50円の家庭が多いと思います. 今どき寄付などとは心ないようですが, 遺族会より昨年春からの強い要望があるこの計画には遺族の家庭でも進んで加入されております. 何とぞ国に殉ぜられた人達および遺族の方の御気持ちに思いをいたされ, 心から御賛成下さるよう願います


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*1:執筆者名無し「大原町忠霊搭建設委員会」としての投稿, 文体の特徴は文末の「ではありません」かにゃ