朝日新聞【1954/09/12(8面)千葉版「灯台」】 忠霊搭建設に一言


大原一町民


夷隅郡大原町の町会では「忠霊搭」を造ることを決めたそうです. 総額120万円で棟上げ式と除幕式に4万円を使う予定だそうです


人口2万人として赤ん坊を含めて一人60円だから, 町税を納めている者にかかってくる一人当たりの寄付の額は100円以上となります. もちろん寄付とは名目上のことで, 婦人会や隣組を通じて戸別割当になるのは分かり切っています


予定地は大原中のそばの田だといいます. 大切な田を埋立ててまで設ける必要があるでしょうか. 忠霊搭を作るくらいなら遺族の補助をすべきだと各地で盛んにいわれているではありませんか. 多額な金を費やせば息子の魂が浮ばれるなどと町民は考えていません


企画屋がもうけ, ボスが酒を飲み, 観光と逆コースとの材料にされるのではないかと心配です


大原町は決して豊かな町ではありません. 漁獲量も多くなく, 生活に困っている漁民が大勢いるし, 学校施設に, 公民館の図書にお金の使い道はたくさんあるのです. 忠霊搭を建てるという主旨そのものはいいかも知れませんが, それならもっとつつましくして隣の東海村のようにスクールバスなど, みんなのためになるものを作ってほしいと思います. 町議の人たちはどのような基礎条件によってこの計画を立てられたのでしょうか. 少しも早く町民全体の意見を聞いて, 町会の一人よがりな企画にならないよう健全な方針を立ててください. 町議の方の御回答をお願いします