『性愛の民俗学』解説: 礫川全次


神崎清の「パンパン語源考」は『座談』第3巻第5号所載. パンパンといっても今日その意味を知らない読者も多いかもしれないが,戦後,日本の各地に出現した進駐軍相手の売春婦の通称である. この言葉の語源についてはいくつか説があるようだが,ここで神崎はサイパン島起源説を唱えている. 同説の当否については今判断を保留する


「パンパン語源考」というタイトルを掲げてはいるが,この文章の主題は別のところにある. すなわち,サイパン島の陥落にともなって生じた日本人社会の変化,特にこの島にいた女性たちの生活の変化である


ここで神崎は「パンパンの存在によって一般の日本婦人の情操が守られる」という命題を,事実によって否定している. これはなかなか重要な指摘ではないだろうか. そのほか日本人手芸商会の話など,あまり知られていない情報も多く,短いが有益な読み物といえる


神崎清は売春廃止論者として知られたジャーナリストで,著書多数


パンパン語源考

    神崎清