「くにのあゆみ」をめぐって 歴史教育の諸問題【4】

「教育の眞の目的は,よき疑問を起させるにあるといつても過言ではなく,国民生活の上に立たぬ史学は有害無益なる遊びの学に過ぎない」との柳田國男の達言を待つまでもなく(毎日新聞歴史教育の使命」)歴史教育を現代の社会生活から出発させることは血の通った歴史教育への好機会ではあろう. 教員が適当に活用すれば常に現代社会の矛盾よりさかのぼつて生徒児童をして歴史批判の原則を理解させる道が開かれたものともいえよう.しかしながら実際の教員の動きは「新制度」に目を廻し,教育技術の末節を「修得」することに追われて,いたずらに混乱と焦躁を続けているかに見える. やがて配布される学習指導要領についても先ずその編纂方法に注意しなければならない. それらはまた,一方教員養成機関として「学芸大学」案が教育刷新委員会より文部大臣に答申されて旧師範学校の民主的偽装が遂げられようとしていることと共に,現在及び将来の歴史教育ひいては全教育に反動化の抜け道をあたえたものとしてわれわれは厳重にこれを監視する必要があろう


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