武士と庶民生活

家永 鎌倉の武家政治では武士が中央の勢力に対して農民の間から始めて庶民を代表して勢力を形成して起つたこと,そして始めて大地と結びついていた武士階級が中央に出るにつれて次第に遊民と化して行くのが近世以降の大勢であることを強調している,これは政治と庶民生活との関係を常に考へさせるといふ趣旨で例えば先の奈良朝の文化についてもそれがいかにレベルの高いものであつても所詮国民の文化になつていないことを強調したのと同じ趣旨だ


山形 この時代に経済の発達が出てきているが経済史ではどんな書物があるか


家永 土屋喬雄『日本経済史概要』岩波全書,中村吉治[きちじ]『日本経済史概説』日本評論社,1941


山形 日支交渉史では


家永 木戸泰彦『日支交通史』辻善之助『海外交渉史話』


並木 戦争についてどう児童に説明すべきか


家永 従来は戦争の勝敗といふやうな部分的な所に眼を捉はれていたが,今後はもつと歴史の大局との関連から説明すべきとおもふ. 英雄中心に陥らない程度なら国民的な逸話を取入れることは差支へなからう