報告の要点(4) KPの問題

報告の要点(4) KPの問題


従来の方法(提唱派)此の論者は最近(共産党)は大衆団体の中に介在しこの団体をして精神的に支配するものであると云ふ奇妙な議論を展開している


(i)KPは日本に於ては合法的に組織し得られない. そこで日本に於けるKP任務と組織は次の如きである


Kの任務は共産主義政策の提唱と教育的任務である. 組織は大衆団体内の指導分子及有力な共産主義者の個人が集つて作るもので一般大衆をその基礎的構成要素としない


(ii)(行動派)Kは労働者の工場細胞に基礎を置く大衆的組織を持たねばならぬ. が然し全然の非合法的存在しか許されない. 従つてこの大衆と云ふ意味も大衆に支持されると云ふ意味での大衆党と云ふ意味であつて従つて工場細胞が党の基礎と認めながらそれに主義を置かず大衆団体の幹部或は有力者を党員とすることに主点を置きどうしてあの団体を動かすかと云ふのみを政策の主点に置いた


(i)個人的な知人友人をたどつて作つたしかもインテリゲンチャ党の主要構成要素として労働者階級を事実上除外した所の方法


(ii)機械的方法に依つて特に労働組合幹部, 農民組合幹部等の者をかき集めた所の方法


前者の議論は云ふまでもなくKPの任務と性質を滅却した所の意見であり解党派の理論である. 同時にこれは明かにセクト主義である. 後者の理論も亦同じくセクト主義であり, 現実に党の大衆組織と独立性を認めざる所の解党派の理論である


(iii)(主流派)先ず理論闘争によつて, マルクス意識を戦ひとり, 凡ゆる非マルクス主義思想から分離し, 意識の完成されたものの結合即ちそれに依つて主体を完成すると云ふ理論である. そしてKは職業革命家の団体であつて, 真のマルクス主義意識の完成されたもののみの結合である. 先ず何故に主体の完成と云ふ歴史的特殊の意義のある, 理論闘争が必要か, 1902年,レーニンの提唱した当時と今日,日本は同一であるが,更に1918年コンミンタン成立当時と同じである. 1902年には主体が出来ていなかつた,1918年には共産党分子は社会民衆党の中に介在していた, だから必要だ,1902年,1918年当時と,今日日本の客観的情勢が異なることは別として以上二つの事情からしても相違する.


(a) 主体は今日国際的に出来ている, 何故にそれとは別に作る必要があるか(宣言の文句)


(b) 今日Kは右翼に存在している, 初めから分離して出来ているではないか


(c) 従つてかかる理論の必然的帰結は, 意識を主体として(即ちコンミンタンと別に作るのではないと云ふから又組織的な分離結合ではなく思想的なそれだと云ふから)主体を意識として成立する所のものになる, それではKでなくて哲学会である


(d) 意識のみの完成, しかもそれは理論闘争に依るも行はれると云ふのだから党内の盛んな分離結合を導くものだ, これが又解党派議論でなくて何であるか


(e) 一国に於ける主体(この主体とは意識だ)がなければ従来の如く公式論の範囲を出ないと云ふことも又大きな誤り, コンミンタンの政策或る部分は公式として与えられているものを正しく日本の客観的諸条件に即して実現すればよいのだ. 意識のみが完成した所で公式を生かすことが出来るものではない


(f) Kは職業革命家の団体である. しかもこの意味は真のマルクス主義意識の完成されたものと云ふ考は根本的に誤りである. そんな人がさう多くあるものではない. 中央部は総ゆる仕事から離れ, 革命の仕事を職業にしている人達に依つて作らなければならぬが, 一般党員は何等かの仕事を工場に農村に於てそしてそれから生活費を取らねばならぬ. かかるレーニンの輝かしい言葉をそのまま無茶苦茶に使用してはならぬ


党は労働階級の大衆の闘争から生まれるものでなければならぬ. 然しこれは自然発生的に作れと云ふことではない. 個人的な方法と機械的な方法によつて作らるべきではない. 労働者に賃金, 時間の闘争から自己階級全体の利益のための闘争及び他の被抑圧迫民層に加へられたる圧力に対する闘争から政治権力に向かつて闘争に参加することを, 不断に闘争の渦中に於て宣伝煽動する所の非合法(日本に於ては)の機関紙を持つことが党建設の基本的条件だ. そして労働階級の前衛の結成を闘争に於ける彼等自身の要求に依つて作らなければならないと云ふ状態を作ることが党建設の最も重要なることである. 機械的に党に入れるのではなく労働者自身が党に入ることを要求するといふ様な方法でなければ大衆的党は出来得ない. 即ち大衆に信頼され正しく大衆の利益を代表するそして大衆に基礎のある党は出来ない


党はレーニズムの思想的根底の上に労働者階級を主要の構成要素として構成され, 組織の基礎は工場にある所のものでなければならぬ. 観念的工場細胞論及びインテリゲンチャの所であつてはならぬ


コンミンタンの綱領政策を承認し定期的の会費を納入し組織の一人として活動し規律を厳守するものならば党員である. 職業革命家意識の完成されたものに厳守さるべきでない