東京朝日新聞 1915/3/13(大正4年) 5-5 卒業はしても嫁には行かぬ

●卒業はしても嫁には行かぬ

▽呉服屋の宛違ひ

都下五十餘の各女學校の卒業式も早や目の前に迫つて来た 三千餘名の卒業生中には在學中よりそれぞれ結婚の申込もあらうし又既に婚約の調つたのもあらう兎に角何れも卒業を期とし且

▲諒闇明(りやうあんあ)けと

云ふので歸国の上各地に於て盛なる結婚の式を擧げるであらう。と云ふ胸算用で都下の大呉服店では流石は商業柄女學校卒業期の前々から夫々手配して卒業生の名簿を調べて各生徒や父兄に宛女學校卒業を祝する意味を印刷したる手紙を出して末尾に御結婚の御支度其他一切の御用品に就て是非御下命の榮を賜はりたい抔と記し大に

▲暗中飛躍を

試みて結果如何と待つて居ると効果は多少ないではないが大概は娘を連れて東京見物かただ小買物でもして歸る位が關の山で目差す結婚の前支度は殆ど注文がない 偶々地方から來て居た女學生等が歸省して親戚廻りする為とか又は祝儀支度の時にも間に合ふと云ふ兩様で模様ものなど注文するものもあり或は極仲のよい友達が五六名連れ立つて來てお互に袂別の記念にと揃ひの模様の着物を注文に來る位が目立つ反響だ これは近來

▲不景気の上

に米價が安い為に地方の金廻りが悪いのと女學校を卒業しても直ぐ嫁には遣らず一年なり半年なり自宅又は相當な處へ再び家事見習ひに遣らうと云ふ様な結果なので統計から云つても毎年十月十一月が一番多いと云ふ様な譯で折角氣を利かした呉服屋も大當違ひで悄氣ている





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id:dempax:19830306「女子大生にはかま人気 卒業式は復古調?」『朝日新聞』1983/03/06 11-5【女子大生の卒業式や謝恩会に はかまの人気が定着したようだ. デパートには色とりどりの既製品も並び 目をひいている】





*1:朝日新聞データベース縮刷版(東京本社または大阪本社最終版〜1984年末)「卒業式&はかま」検索結果によった 1985年以降はデータベースが替わり地方版の記事も読めるようになった. が似た記事の重複もあるので要注意