東京新聞 2017/01/28 27面【特報】本音のコラム

少子化には多様化

師岡カリーマ

友人が手術のため入院した。夫婦共に留学生として来日した外国人で、今は幼い子が二人いる。夫は日本の一流企業で理系専門職に就くエリートだ。難しい手術ではないが全身麻酔を伴うため、彼は妻にこう言った


「僕に万一のことがあっても、絶対に帰国しないでくれ。子供は日本で育ってほしい。あらゆる手を尽くして、ここに残ってくれ」「そんな心細いことを言わないで。私は非常勤だから在留許可は下りないし」そう言って妻は泣いたが、彼は念を押した「日本で育てると約束してくれ」


高学歴で3カ国語を話し、行こうと思えば欧米のどこへでも行けるのに子供は日本の価値観で育てたいと、日本を選んでくれた。でもその子供は「外国人」のままだ。もったいないではないか。少子化を嘆くなら、日本に生活基盤がある親のもとに生まれた子は、自動的に国籍を取得できる制度を考える時が来ているのではないだろうか


勤勉・清潔・誠意・とことんやるプロ精神。こういった日本的美徳の行く末を危惧する人の不安も分かる。だがこれらの美徳を、環境や教育の賜物ではなく人種的特性と定義すると、逆に過去の侵略行為に鑑み、日本人は凶暴な人種だと 屁理屈を言われても反論できなくなってしまう。日本が育てれば日本人。グローバル化の荒波の中、人種的多様性は財産になるはずだ