朝日新聞2016/11/09(13版) 4面【総合4=東京本社】

オスプレイ佐賀で試験飛行 防衛省配備へ弾み狙う

陸上自衛隊が導入するオスプレイ配備計画をめぐり、防衛省が8日、佐賀空港(佐賀市)で米軍オスプレイの試験飛行を行った。地元の要請を受けた異例の対応だ。米軍と自衛隊の連携を強める日米両政府は全国各地でオスプレイの配備や運用を進めており、防衛省は今回の飛行で佐賀配備に向けて弾みを付けたい考えだ



8日午前、小雨がぱらつく佐賀空港の上空に米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)所属の MV-22 オスプレイ1機が重低音を響かせて飛来した。1時間余り、悪天候時の「計器飛行」と配備後の基本経路とされる「有視界飛行」の経路を通り、空港に面した有明海や市街地の上空を飛んだ


試験飛行は「騒音を確認したい」という地元の声を踏まえ、佐賀県山口祥義(よしのり)知事が9月に稲田朋美防衛相に電話で要請した。県が配備を受け入れるかどうかの重要な判断材料となる


国は2019年以降、米側から購入するオスプレイ佐賀空港に順次配備する計画を進める。佐賀に白羽の矢が立った理由は、その立地条件だ。陸上自衛隊は離島防衛のため、2017年度末めどで陸自相浦(あいのうら)駐屯地(長崎県)に「水陸機動団」を新設。同駐屯地に近い佐賀空港オスプレイの拠点を置き、一体運用する考えだ


国は、県営の佐賀空港の収支が毎年赤字という「足元」も見る。オスプレイ配備で着陸料収入が入る。防衛省幹部は「空港の周りは農地だらけで、商店街もシャッター街。県にとって自衛隊が来ることはありがたいはず」と期待する


受け入れの鍵を握る山口知事は飛行を視察後「大勢の方がそれぞれ感じたことを集約したい」。今後の判断については「(試験飛行は)一つの材料。きっかけだ」と言葉を選んだ


知事が慎重になる理由は、計画予定地の地権者の同意がまだ得られていないからだ。地権者は地元漁協4支所とその組合員だが、海苔漁もあり同省の計画説明会は途中段階。「県として判断材料が揃っていない」(県幹部)のが実情だ。国側は年内の受け入れ表明に期待するが、漁期が終るのが3月ごろで、知事の最終判断は来春以降に延びる可能性もある


一方、地元では米軍利用に対する警戒感が強く、安倍首相が国会で10月、在沖米軍の訓練移転先として佐賀を名指ししたことへの不信もくすぶる。山口知事は8日「状況に応じ総理にお会いし、確認を取ることも必要だ」と話した(菅原晋・岡村夏樹)

拠点整備 全国で着々

沖縄に配備されているオスプレイは、すでに全国各地に飛来している


在日米軍は現在、海兵隊の MV-22 オスプレイ普天間飛行場に24機配備。2021年までに空軍の CV-22 オスプレイ10機を横田基地(東京都)に配備する計画だ


米軍機は災害時の物資輸送から特殊作戦部隊の人員輸送まで、幅広い任務をこなす。熊本地震で救援物資を空輸支援したほか、日米共同作戦にも参加。防衛省は「オスプレイ配備は日米同盟の抑止力を向上させ、アジア太平洋地域の安定にも寄与する」と説明する


日米共同の整備拠点も、国内に設置する。陸上自衛隊木更津駐屯地(千葉県木更津市)で来年1月の運用開始を目指している。普天間飛行場の機と、佐賀空港に配備予定の陸上自衛隊の機が交代で整備のため飛来する見通しだ


一方、沖縄では飛行訓練への不安が根強い。日米両政府は9月、米軍機の県外への訓練移転を進めるため、日本側が移転に伴う追加的な経費を負担することで合意。安倍晋三首相は先月の参院予算委員会で「負担軽減に向けて着実に前進している」と述べ、訓練移転を進めていく考えを示した(相原亮)



(記事左上の地図)オスプレイが利用する主な基地や拠点(計画含む)


陸上自衛隊木更津駐屯地(千葉県木更津市) 2017年から日米オスプレイの整備拠点に


□米軍厚木基地(神奈川県綾瀬市/大和市)


□米軍横田基地(東京都福生市など5市1町) 米軍が2017年から配備予定


□米軍岩国基地(山口県岩国市)


□米軍佐世保基地(長崎県佐世保市)


佐賀空港(佐賀市) 2019年度以降に陸上自衛隊オスプレイ配備計画


□米軍ヘリパッド(沖縄県東村・高江集落周辺) 国が建設を計画するヘリ着陸帯(ヘリパッド)カ所中、2カ所は完成し米海兵隊オスプレイが利用。残りも建設中


□米普天間飛行場(沖縄県宜野湾市) 米海兵隊オスプレイ配備


ホバリング騒音ヘリより大きく

木更津での測定結果



防衛装備庁は8日、陸上自衛隊木更津駐屯地(千葉県木更津市)で月日に実施した米軍輸送機オスプレイの騒音測定結果を公表した


同庁によると、陸自が現在使用している輸送ヘリコプター CH-47JA の騒音と比較した。それぞれが使う飛行経路など3カ所で測定した結果、9回のうちオスプレイが1回上回ったが、いずれも同程度だった。空中で停止するホバリングでは二つの高さで計6回測定。オスプレイが85〜93dBだったのに対し、CH-47JAは72〜84dBで、いずれもオスプレイが上回っていた。渡辺芳邦木更津市長は「これまでの説明の通りで、大きな違いはなかった」とのコメントを出した