『ホロコーストに教訓はあるか』序言(Margaret MacMillan)より



マラスはアナロジによってホロコーストを他の歴史的な出来事と結びつけて考えることに慎重だ. やり方によるとマラスは言う. すなわちアナロジによって可能性を拡げて考えたり疑問点を整理出来る場合もあるが,一方で愚かにも柔軟性のない考え方に陥ることもある. マラスはホロコーストの原因を単純に説くことに与しない. たとえばダニエル・ゴールドハーゲンが説く,ドイツに深く根を下ろした反ユダヤ主義からホロコーストが展開したという説はある. しかしマラスが指摘するように,1914年以前反ユダヤ主義が最も広がりを持った国だといわれているフランスとロシアではユダヤ人の集団ジェノサイドが行われなかったという事実がある.


歴史学者はさまざまな可能性と複雑な説明に寛容でなければならない とマラスは論じる その通りだと私は思う また人は歴史に対して自分自身のルーツを拠り所としそれぞれの感慨を持って解釈する とマラスは主張する