ホロコーストを巡る真実を懸けた信念の法廷闘争

【出典】『潮』第三文明社 2018/1 p.102 - p.107

ガス室と大量虐殺という史実を否定


(写真・撮影=富本真之) 歴史学者 米エモリー大学教授 デボラ・E・リップシュタット アメリカの大学で現代ユダヤ史とホロコーストについて教鞭を執る 著書に『ホロコーストの真実 大量虐殺否定者たちの嘘ともくろみ』『否定と肯定』『アイヒマン裁判』などがある


2000年1月 ロンドンで「ホロコースト」を巡る歴史的裁判が行われた 第二次世界大戦をテーマにナチスに好意的な内容の著作を数多く執筆しガス室は存在せず 大量虐殺などなかった」とホロコースト否定論を主張するイギリスの歴史家デイビッド・アーヴィングユダヤ歴史学者デボラ・E・リップシュタットから 著書『ホロコーストの真実 大量虐殺否定者たちの嘘ともくろみ』の中で嘘つき呼ばわりされ 名誉を著しく傷つけられたと名誉毀損で訴えたのだ


開始当初から欧米でセンセーショナルに報道され ユダヤ人のみならず世界中の知識層や学者から「歴史の真実とは何か」と大きな注目を浴びたこの裁判は同年4月に判決が下る 裁判を担当したチャールズ・グレイ判事はアーヴィングが自分の政治的信念に合わせるために意図的に史実を歪曲したと述べリップシュタット側の完全勝利となった


06年 彼女は裁判の一部始終を綴った『否定[原題 DENIAL] ホロコーストの真実をめぐる闘い』を出版 この度映画化され世界中で大きな反響を呼んでいる 来日したリップシュタットさんが当時のおもい,この裁判が社会に与えた影響や意義を熱く語ってくれた


--- デボラさんはニューヨーク生まれで御両親もホロコースト体験者ではないそうですがこの問題に関心を持つようになったのは何故ですか


父はドイツが第三帝国になる前に故国を離れ 母はカナダ生まれで私はマンハッタンで育ちました 家族に直接的なホロコースト生存者はいませんがこの道に進んだきっかけは二つ有ります…以下略


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否定論者の背景には差別感情がある


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アーヴィングがイギリスの王立裁判所に提訴したのは英国の司法制度では名誉毀損事案において原告は名誉毀損を指摘するだけでよく立証責任は被告にあるので裁判を有利に

事実・意見・嘘 三つを見極める