■ 良家處女の賣淫

立派な家の娘が家は焼け親兄弟には死なれ頼る所もなく其日の生活に窮して辻淫賣に出て居るのが少なくない 浅草寺内や澁谷邊にはそれが最も多く出没して服装や容姿も見にくからず中には袴を着けて居るのもあると其噂が一時宣傳されたがこれは事実では無かった 然しこの風説の起りは全くの虚構でなく外見上チョットそんなに見えた事があつたのだと云ふ それは浅草の名物であつた銘酒屋といふ魔窟が悉く焼失したのでそこに稼いで居た私娼が四散した先々で良家の處女らしく装って客を引いたのであると云ふ そしてそんな辻引は2,3日間のことで後には警察の取締で止んで了まつた