下書

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*1:南京事件の始まりと終りを何時にとるか, 地域をどの範囲で捉えるかは南京事件の理解の仕方に関わる. 狭い地域・短い期間への限定は「否定論者」の常套する詐偽手法でもある. 被害者の人数が2万人か20万人かは, 南京事件の期間・地域の捉え方の違いでも左右される. 古い本になるが藤原彰編『南京事件をどうみるか 日・中・米研究者による検証』青木書店,1998/7/25(南京事件60年国際シンポの記録)での笠原十久司「南京事件の実相 南京郊外における残虐事件」での犠牲者数の推定を引いておく【南京大虐殺において, 犠牲にされた中国軍民の数を正確に算定することは, 今となってはまず不可能であるが, これまで発掘・収集された資料と現在の研究状況を踏まえて, 概数の推測は可能である

私の現在までの研究からは, 総勢15万人の防衛軍のうち, 約4万人が南京を脱出して再結集し, 約2万人が戦闘中に死傷, 約1万人が撤退中に逃亡ないし行方不明となり, 残り8万余人が捕虜・投降兵・敗残兵の状態で殺害されたと推定している. 資料的に算出が困難なのは, 民間人の犠牲者数であるが, 南京城区と近郊の県城と農村に分けると, 前者より後者における死者の方が多かった. 南京安全区国際委員会委員長のJ.H.D.ラーベは, 前者における民間人の死者を5万人から6万人と推定している. 金綾大学(現在の南京大学)社会学教授のL.S.C.スマイスの調査に基づけば, 後者における死者は3万人を越えるものと推測される

現在の資料・研究状況を踏まえて, 南京事件において数万人以上, それも万近いかあるいはそれ以上の中国軍民が犠牲になったと推定している. 日本軍側の資料の発掘・公刊がさらに進み, 中国側において近郊農村部の犠牲者数の記録調査がもっと進展すれば, より実数にせまる数字を推定することが可能になろう p.18】