志位和夫『激動する世界と科学的社会主義』1991/02/10 ISBN:4406019294


はじめに より抜粋


… 第二部には党本部で青年学生分野を担当していた時期に直面したイデオロギー問題についての四つの論文を集めました … 70年代後半に本格的にはじまる戦後第二の反動攻勢は思想と理論の面でも様々な反動的潮流を氾濫させることになりましたが「ポストモダン」とか「ニューアカデミズム」などと呼ばれて,さかんにジャーナリズムにもてはやされた思想潮流もそういう状況のなかで生みおとされた一変種でした. 彼らは「近代の否定」という旗印のもとに, 科学と真理,人間の理性, 歴史の法則などの価値あるすべてを投げ捨ててしまうという議論を行いました. 当然その矛先は科学的社会主義にもむけられることになり, その有害な影響とたたかうイデオロギー闘争は私たちにとっても差迫った課題となりました … 「大学と学問への反動的挑戦」は「ニューアカデミズムの旗手」などと呼ばれた中沢新一氏を東大にむかえるかどうかをめぐっておこった紛争をめぐって, 自他ともに保守派のイデオローグを認める西部邁氏や佐藤誠三郎氏などと「ニューアカデミズム」の代表的論客である中沢氏との共同戦線がつくられたことを明らかにし両者の反動的な思想的共通性を暴き出したものです … レーニンは『マルクス主義と修正主義』のなかで 情勢の様々な転換がおこるとき「修正主義のあれこれの変種」が不可避的に生まれるとのべたことはよく知られていることですが, 東欧・ソ連の激変とそれを利用して全世界を席巻した反共の嵐は,国際的にも国内的にも,科学的社会主義の立場から背反した一定の潮流を生み出すことになりました … 第三部には「ネオマルクス主義」を批判的に検討した二つの論文を収めました[*1] 1987年11月に開かれた日本共産党第18回大会[*2]がこの分野での研究の立ち遅れの克服を呼び掛け,それ以来活発に各方面からの批判的検討がすすめられてきましたが,そのなかでとくに重視されたのは「」を,アルチュセール,プーランザス,ジェソップ等に代表される西欧の源流にまで遡って,批判,検討をくわえることでした …


【II】


「今日における組織と人間-青年の生き方の問題にもふれて」『前衛』1987/8月号


「退廃と遊戯の「哲学」-浦地実「〈ポストモダン〉と唯物論」批判」『前衛』1986/6月号


「大学と学問への反動的挑戦-いわゆる東大「中沢問題」をめぐって」『前衛』1988/9月号


社会主義を投げ捨てた「たまねぎの皮むき」-「フォーラム90's」での加藤哲郎氏の「講演」について」


【III】


「「ネオマルクス主義」とはなにか」前掲『ネオマルクス主義-研究と批判』収録


「プーランザス国家論の矛盾と破綻-「ネオマルクス主義」の批判的研究」『前衛』1989/8月号

*1:「批判」と「批判的な検討」の違いに注意,太字強調は引用者による

*2:『前衛』1988/1月臨時増刊/日本共産党第18回大会特集