【第一日曜】2/End

【承前】ところがそのときオツペルは,ならんだ器械のうしろの方で,ポケツトに手を入れながら,ちらつと鋭く象を見た. それからすばやく下を向き,何でもないといふふうで,いままでどほり往つたり来たりしていたもんだ



するとこんどは白象が,片脚床に上げたのだ. 百姓どもはぎよつとしたそれでも仕事が忙しいし,かかり合つてはひどいから,そつちを見ずに,やつぱり稲を扱いていた



オツペルは奥のうすくらいところで両手をポケツトから出しても一度ちらつと象を見たそれからいかにも退屈そうにわざと大きなあくびをして両手を頭のうしろに組んで往つたり来たりやつていたところが象が威勢よく前肢二つつきだして小屋にあがつて来ようとする百姓どもはぎくつとしオツペルもすこしぎよつとして大きな琥珀のパイプからふつとけむりをはきだした. それでもやつぱりしらないふうで,ゆつくりそこらをあるいていた



そしたらとうとう象がのこのこ上がつて来た そして器械の前のとこを呑気にあるきはじめたのだ



ところが何せ,器械はひどく廻つていて,籾は夕立か霰(あられ)のやうに,パチパチ象にあたるのだ. 象はいかにもうるさいらしく,小さなその眼を細めていたが,またよく見ると,たしかに少しわらつていた